愛してる (角川文庫 さ 24-2)
愛してる (角川文庫 さ 24-2) / 感想・レビュー
(C17H26O4)
この本に書かれた若者たちの寂しさは、あの時代特有のものなのだろうか。古い寂しさなのだろうか。書かれたのは1990年、著者21才のときだという。エッセイを読んでいるような感覚になった。他者の痛みをこんなに感じて引き受けて、著者自身の痛みの置き場所は。笑顔の後ろにあるかもしれない悲しみは。ついそう考えてしまう。今もし生きていたなら。短文で拡散されるこの時代の若者たちの寂しさをどう書いただろうか。
2019/12/17
ひめか*
21歳の時の鷺沢さんの作品。ごく普通の日常が流れていくいつものスタイルだった。繊細で美しい。「思ったり感じたりした者の勝ちだ。私もニワトリ頭に詰められるだけ詰め込んで、全部全部を憶えていようと思う。一生懸命に」あとがきは今の私と歳近いし、今私も同じ気持ちだからすごく共感した。「食べる、寝る、お湯に浸かる、この三つを繰り返しやってれば間違いないんだから」辛くてボロボロになっても、人に会ってごはん食べるだけで気持ちが軽くなったり。彼らは確かに生きている。言葉で言うのは難しいけど、人への愛に溢れた作品だと思う。
2015/12/07
masa@レビューお休み中
若かりし鷺沢萠が映像として浮かぶ。まるで、彼女が主人公で当時を回想しながら言葉を紡いでいるように見えてしまう。行きつけの店“ファッサード”には愛すべき人たちがたくさんいる。バカ騒ぎして友達の家に押しかけたり、夜中突然電話を寄こしたり、正体不明になるまで酔い潰れて介抱してもらったり…。そんなの全然ダメじゃんって思うかもしれないけど、すごく理解できて共感できて泣きたいような気持ちになる。どんなにつらくても、どんなに苦しくても、そして生きづらくても、愛してる人たちがいるだけで、なんとかなる。きっとそうなんだ。
2012/07/29
メタボン
☆☆☆★ 登場人物たちが少しずつどこかでつながっている連作掌篇集。人物名や街の描写から山田詠美の世界観にも通じるところがある。生きるのに不器用な若者の群像。
2022/08/10
あつひめ
集う場所・・・そこは寂しさや苦しみを抱えた人がほんのつかの間でも現実を忘れバカ話やバカ笑いのできる避難所なのかもしれない。若い頃の苦労はいつまで続くんだろう・・・っていう暗くて長いトンネルのよう。そこから羽ばたこうとむちゃくちゃ羽をバタバタさせる若者達。この小説は終りじゃなくまだまだ途中の物語。同じ時間にみんなが生きている・・・証のような作品。
2010/06/18
感想・レビューをもっと見る