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さいはての二人 (角川文庫)

さいはての二人 (角川文庫)

さいはての二人 (角川文庫)

作家
鷺沢萠
出版社
角川書店
発売日
2005-04-23
ISBN
9784041853108
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さいはての二人 (角川文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

中篇(表題作)が1篇と、短篇2つを収録。表題作「さいはての二人」は、主題がやや拡散気味で、主人公の美亜も外見はともかく内質の魅力には幾分乏しいようだ。そのことは同様に相手の朴さんにもあてはまり、在日被爆2世という設定も、なんだか種明かしのようで、かえって小説としての説得力を欠く結果になったように思う。一方、2つの短篇はよく似た発想で書かれているものの、作品に込められた二重、三重の喪失感が主題を十分に支えている。「約束」は、リアルにはともかく、小説的なリアリティは十分に確保されていると言えるだろう。

2018/03/22

みも

表題作100頁、「約束」34頁「遮断機」27頁の3篇。「約束」が特に心に沁みる。渓流の如く淀みなく紡がれる文章は、女性らしいしなやかさを有し研ぎ澄まされた感性が匂い立つ。筆致はドライだが、儚く頽れるような繊細さが生み出す情緒には温かみがある。綴られるのは、孤独・諦観・虚無といったマイナスの心象であるが、反面そこから仄見える「生」の貴さや喜びやおかしみが胸を打つ。桜木紫乃さんを瑞々しくした感じと言えば、作品の雰囲気は伝わるだろうか。読メの登録があまりに少ないのが惜しい。女性にお薦めしたい。#ニコカド2020

2021/01/09

おしゃべりメガネ

初読みの作家さんで、今は亡き鷺沢萌(さぎさわめぐむ)さんです。作者さんの‘最期’の恋愛小説というだけあって、気のせいなのかどの文章からも、どこかただならぬ雰囲気を感じるような気がしてなりません。本作は表題作ほか2編の計3編からなる短編集ですが、どの作品も人物の心理、周囲の情景ともに描写が秀逸です。展開的には終始、シリアスな空気でつつまれていますが、どこかに芯の強さがひっそりと表現されているように思えます。芥川賞および三島賞候補にもなった作家さんだけに、本作だけでもその実力が非凡なのは言うまでもありません。

2015/11/08

(C17H26O4)

みっともなくてもいいじゃない。どうしようもなくてもいいじゃない。だって人生、色々なときがあるのは当たり前でしょう。人ってそういうもんでしょう。そう著者が言っているような気がする。鷺沢萠の小説を読むとよくそんなふうに感じる。そしてそのあといつも、どうして早くに逝ってしまったのだろう、と悲しくなる。人とのつながりによって、交わされた情によって救われた人たちのストーリー。切なさと温かさと仄かに希望を感じる三篇。

2022/01/04

ひめか*

静かだけど重くて、悲しいけど最後は少し慰めてくれる光がある。『さいはての二人』この人は自分なんだって思うくらい一体感を覚える気持ちわかる。最後は急に心に穴が空いたようだったけど、新たな生命の誕生によって辛さは緩和される。『約束』まさかのラストだった。行雄とサキのような関係いいな。『遮断機』心折れる中で故郷に帰っておじいと再会。おじいと笑子の関係も優しくて哀しみを癒してくれる。どの人もさまざまな家庭事情があり、それぞれが息苦しさや哀しみを抱えているけど、その一方で愛にも溢れている。愛と死が描かれていた。

2015/11/09

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