春秋山伏記 (角川文庫)
春秋山伏記 (角川文庫) / 感想・レビュー
アルピニア
山間の村の薬師神社の別当としてやってきた山伏の大鷲坊が、婆さまの頭痛から、心の病、泥棒退治、キツネ落とし、はてはモテない男の嫁探しまで、村の困りごとを収めるのに奔走する。方便の嘘をつき、据え膳も食ってしまう大鷲坊だが、理不尽な事には声を荒げて諫める頼もしい存在になっていく。彼の言動に、物事を収める際の硬柔の塩梅についても考えさせられた。作者はこの物語を通して郷里の風習、そして急速に衰退する方言(荘内弁)を書いておきたいという思いがあったようだ。地元のかたの朗読で、方言を耳でも味わってみたいと思った。
2022/01/25
Gotoran
庄内地方の山深い村に大鷲坊という山伏が現れ、その村で起こる事件や事案、不審者の入村、火事、嫁取り、狐憑き、人攫いなど、村人とともに解決していくという5つの話が連なった作品。あれこれと知恵を絞って泥臭く解決していく、何とも人間臭い、親しみのある山伏・大鷲坊。著者藤沢周平の人間を見詰める優しい眼差しを垣間見ることが出来た。読み応え十分で、愉しく読ませてもらった。
2023/04/09
baba
羽黒山からやって来た山伏、村の人々から危険視されていたが、子どもの命を救い、祈祷で娘の病気を治し、次第に畏怖と尊敬を集める。知らなかった里山伏と、山に囲まれた人々の暮らし、なによりお国訛りの訛りが読み進めるうちに脳内に響きすっかり村人になった気分。村の暮らしがもっと読みたいと思わせる「安蔵の嫁」が良かった。
2016/06/27
ぶんぶん
【図書館】藤沢周平版・民話人情記。 山を下りた山伏と里人の触れ合い、村人の苦労を何とかしたいと山伏が立ち上がる熱血編。 色気を持て余す後家さん、間男されてまで楽しみたい人妻、狐ツキにされた女性、いろいろな女性像が現れる。 張型を創って後家さんから逃れる大鷲坊が愛しい、愛してるから精魂込めて作る、おとしさんと仲良くね。 また、方言を散りばめて、読みにくい点もあるが、そこが又、独特の情景で故郷・山形の想いが感じられる。 ユーモラスな表現に藤沢周平の大らかさを感じた。
2022/04/26
トラッキー
久しぶりの藤沢周平。山伏という正体不明の人が、人里に溶け込んで独特の役割を果たす。村人との交流の様子を通じて、江戸時代の農村も厳しいばかりでなく、結構味のある生活をしていたんだなと。
2019/08/09
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