恋愛中毒 (角川文庫 や 28-10)
恋愛中毒 (角川文庫 や 28-10) / 感想・レビュー
さてさて
『これは本当に私の望んだことなのだろうか』。そんな言葉の先に主人公・水無月の深い苦悩を見るこの作品には「恋愛中毒」という書名を体現する水無月の劇的な人生が描かれていました。1999年に吉川英治文学新人賞を受賞した作品であり、2021年10月に亡くなられた山本史緒さんの代表作に位置付けられるこの作品。山本さんの構成の上手さでぐいぐい読ませる物語の中に『恋愛』という言葉が恐怖を感じさせるようにもなるまさかの読後が待つこの作品。「恋愛中毒」という不思議な言葉の行き着く先に、まさに『恋愛』の狂気を見る物語でした。
2024/03/10
ミカママ
これはっ!ものすごい恋愛小説を読んでしまった。うんうん、わかるよ、そうなんだよねぇ、と主人公に寄り添いながら。恋愛相手の「娘」に嫉妬してしまったり、そうそう息子じゃない、娘なんだよ!とか( ´艸`)私自身は、幸い恋愛相手をストーキングしたことはないですが(当たり前か?笑)でも、ひとつ間違ってたら、そうなっちゃってたかも、という素質は、恋愛中のきっと誰にでもあるわけで。いやー、朝っぱらからずんっと重い恋愛小説、堪能しました。山本さん、さすがだなぁ。
2016/02/23
hit4papa
妙齢の女性がはまり込んでしまった恋愛事情を描いた作品です。タイトルからは、次々と男性遍歴を重ねるような印象を受けますが、さにあらず。たった一人の男に、どっぷりと浸かった女性が主人公です。自己顕示欲が強く、自己中心的な男に魅入られてしまった主人公。妻や愛人たちの存在に感情は沸騰していきます。病んでいると言ってもよい恋愛の底辺感が、不快ぎりぎりの土俵際まできてしまいました。ただ、場面転換が多く、てんこ盛り感が否めません。帯にあるような、”衝撃”といった煽り文が適切かというと、どうかなぁ・・・
2019/12/16
mariya926
うーん。私はプライド(?)でストーカーにはならないって思いで、恋愛が終わっても吹っ切ってきたけれど、恋愛の前にプライドも関係ないとこんな感じになるのかな?と思いました。そしてそれは相手の男性にもよると思いました。全てを受け入れて、急に冷たくなって突き放される相手だから歯止めが効かなくなるのかな?と。それでも荻ちんの様な相手がいる事が羨ましい(いても暴走を止められはしないけど)。本当に恋愛中毒って言葉がピッタリです。まだ2冊目だけど、すっかりこの作家さんにハマっています。なんか面白い恋愛小説です。
2021/12/30
bunmei
冴えない女・水無月美雨。男に恵まれず、哀れで、イタクて、壮絶な結末へと彼女を突き動かしていく恋愛遍歴。彼女の言葉にできない本音や心模様を挟んだ描写が、等身大の水無月という女性を鮮明に浮き上がらせてくる。行き着いた先は、作家で女癖の悪い男・創路功二郎の愛人。『恋愛中毒』のタイトル通り、女としての性によって揺れ動かされる愛に不器用な水無月。一方、創路もまた、美しいモデルの本妻以外に、身近に何人もの愛人を抱える『恋愛中毒』の男。そんな男の愛人の1人として水無月が経験した、歪んだ刹那的な恋愛感情が伝わってくる。
2024/05/16
感想・レビューをもっと見る