レーン最後の事件 (角川文庫)
レーン最後の事件 (角川文庫) / 感想・レビュー
W-G
シリーズ探偵を創造したミステリ作家であれば一度はやってみたい事をやる。バーナビー・ロスとドルリー・レーンはその為だけに産まれたのではないか。四部作を通読する事で威力を発揮する今作、"物語としては面白いがミステリとしてはイマイチ"というのが一昔前までの通説であったと記憶している。指紋の概念が欠如した世界、エールズの正体が安易な○○オチetc。確かに粗も目立つ。現代の倫理観で見ると、そもそも『Yの悲劇』の時点で思うところは無かったのかと疑問も止まないが、作家クイーンの意志と熱量は確かにしたためられている。
2016/09/24
nobby
四部作完結編。『レーン最後の事件』そのタイトルのまま醸し出すラストの衝撃や哀愁がたまらない…確かにXYZと順に読んだからこそ、レーンの使命や悲しみが心に染み入る…完全にペイシェンス目線で、斬れ味鋭い推理を隠さず披露するのは読みやすいものの軽率な言動や恋愛模様にはちょっと違和感…怪しき人物達のゴチャゴチャぶりがまさかの安易な真相なのはご愛嬌(笑)シェイクスピアに疎い自分には「ふーん…」程度の蘊蓄ながら、名優たる名探偵設定が物語の終焉に深みを増している。「まだ分からないの?」父に葛藤する娘の嘆きが切な過ぎる…
2022/10/21
修一朗
越前敏弥氏は子ども時分よりこのシリーズに親しんできたとのこと。30年後に自ら翻訳できるなんてうらやましい仕事だな。起承転結で成る4部作の「結」のパート、まさにそのお役目をキチンと果たした作品。本格ミステリーとしては禁じ手的な描き方をしているので前3作の方が精緻な造りだ。ペイシェンスの未熟若者ぶりは前作から変わらずで興が削がれるけど、全体で考えると4部作構成には必要な人物で,最初からこういう展開にするつもりだったことが感じられる。芝居がかった古色蒼然たる文章で描かれた哀愁のレーン氏だった。
2015/05/13
ジャムうどん@アカウント移動してごはんになります
趣向が今までの三作(Zも変わっていましたが)と大きく異なることは前半で良く分かります。シェイクスピアがテーマで「レーン最後」とはうまいこと考えたなぁと思っておりましたが読みきってまさに納得です。中盤で犯人まさかこの人かなー、なんて考えていたらがっつり正解で嬉しいような悲しいような気持ちがこみ上げました。最後の手紙、「主役を演じたその男は人命さえも奪う覚悟で、世界のためにその手紙を救った」このあたりを読み返しては泣きそうになってしまいます。名探偵は神様ではなく人間、そんなことを考えさせられるこの頃。
2015/09/18
オーウェン
ドルリー・レーン4部作最後の作品。 明らかに前の3作と違う始まりであり、怪しげな髭の男の依頼から、消えた警備員の謎。 シェイクスピアの稀覯本。 犯人がかなり絞れた状態であるのだが、この作品の真意は最後の数ページで突然訪れる。 やたらペイシェンスが取り乱していたのはこのためかと納得する。 と同時にタイトル通りこれで、レーンの事件は完結となる。 差はあれども、ミステリ史に残る作品であったのは確かだ。
2023/10/17
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