オディサ・ファイル (角川文庫 赤 537-2)
オディサ・ファイル (角川文庫 赤 537-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
歴史的背景を叙述的な説明文によらずに、リガのユダヤ人収容所の生存者の手記に語らせるアイディアは秀逸。これを当時の看守長であったナチスSS大尉のロシュマンへの怨念に収斂させていくのであり、フォーサイスの語りのうまさが光るところ。ルポライターのミラーは、主人公というより闇を切り開いてゆくナイフのごとき役割というべきか。モサドを中心としたイスラエルのナチス残党に対するあくなき糾弾は知っていたが、もう一方の西ドイツの戦後史の中に、かくまでもSSの影が残存するとは驚くばかり。フォーサイスの取材力と構想力の結晶。
2018/07/07
absinthe
冷徹なプロを描くのが上手いフォーサイスが素人スパイを描いた。青年記者がナチの戦犯の秘密組織オデッサの秘密を暴こうとする物語。フォーサイスの作風は危険を承知で地雷原を匍匐前進する歴戦の勇士がごとしなのだが、本作はそれと知らず地雷原でタップダンスを踊る観光客がごとしである。素人とはいえイライラするほど軽率だ。怖い。他の作品にない趣があってそれも楽しい。それにしてもナチのユダヤ人に対する非道は許しがたいものがあり、青年記者の義憤も頷ける。(青年記者にはもう一つの動機があるが、それは読んでのお楽しみ。)
2022/01/16
KAZOO
この作家の作品は、40年以上も前にかなり読んだものでした。「ジャッカルの日」をはじめとして、この作品もかなり楽しめた覚えがあるのですが今回読み直してほとんど忘れていることに気づかされました。あるユダヤ人の老人が自殺をしてその日記を読んだジャーナリストがオデッサという組織を追い込んでいく様子がうまく語られています。日記の中でのナチスのユダヤ人への虐待はこれも映画で見た「シンドラーのリスト」の収容所の場面を思い起こしました。最後はイスラエルの諜報機関のプロが主人公を助けます。
2023/04/11
キムチ
初読は20歳代だけど、殆ど内容が解らなかった苦い思い出。今回は余りの面白さでスパーク☆20C半ばエジプトはナチスに好意的だった~がメインテーマ。青年ルポライターがナチSSの追及に身を投じて行く流れ。2つの山場は映画シーン、読者は彼と暗殺側は相克する場を俯瞰する形。SSの生き残りは戦後 かなり転身に成功し、姿、名を変えて華麗に余生過ごせたものが多いらしい。中の一人、ロシュマンがサブテーマ。狂言役ともいえるミラーを通し、色々な事実がテロップのように知らされて行く~このプロットは唸るしかない。21Cに入り
2022/06/15
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
一時期はまったフォーサイス。これもまた記憶の彼方。また読み直そうかな。
感想・レビューをもっと見る