戦争の犬たち 上 (角川文庫 フ 6-3)
戦争の犬たち 上 (角川文庫 フ 6-3) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
デビュー作の『ジャッカルの日』の終始息詰まるような緊張感は残念ながらここにはない。少なくても上巻においてはそうだ。こちらの主人公がシャノンに率いられるチームであり、その背景も企業集団や国家といった単位で構想された故でもあるだろう。マッスとしての緻密さは評価できるが、その反面、プロット展開のスピードと文章の飛翔力が鈍ることになったのは残念である。また、彼らのなそうとしていることは、あり得べき事柄の範疇にかろうじて留まってはいるものの、架空の小国ザンガロは戯画化しすぎているように思われる。
2023/04/22
absinthe
アフリカの小国にプラチナ鉱山が!この情報を入手した富豪が政変に乗じて利益を得ようと傭兵を送り込もうとする。フォーサイスは前戯の長い作家でしかも上手だ。傭兵と富豪が会うのも上巻の半ば過ぎだし傭兵シャノンは(現地査察はしたのだが)戦闘のための現地入りすらしていない。それまでの情報取集がものをいうのだ。コツコツとした準備を始める主人公。現地の様子、経済、時事。ジャーナリストらしい感性で書かれており、時事ニュースを読むような現実感。傭兵と富豪の関係も一枚岩どころか狐と狸の化かしあいのよう。
2021/10/03
harass
この作家の自伝を読む前に、目を通したかった代表作。アフリカの極貧国の鉱山に希少な鉱物が大量に埋蔵されていることを極秘裏に知った、英国の投資家はあるアイデアを思いつく。彼に雇われた凄腕の傭兵たちは、100日でこの国を乗っ取る準備をするのだ。緻密でリアリティのある準備と暗躍と取引が語られていくだけで、上巻が終わってしまう。映画は未見だが、原作は実に地味なのに驚く。まあ映画は派手じゃないといけないのはわかるのだが。とはいえ、なかなかやり取りや語りの上手さもあり一気に読んでしまった。下巻に。
2018/08/04
k5
「握るに値する権力があり、それを奪うために戦争が必要と彼らが判断したときに、戦争が起きるんだ。いわゆる理想主義なんてものは、負け犬の遠吠えにすぎない」。新本では買えないので、Amazonで古本購入。プラチナ鉱山の利権のために、クーデターで国を潰してしまおうという、最早すがすがしいまでの巨悪が登場。引用は、その下で戦う「犬たち」=傭兵の言葉なわけですが。現代の小説だと薄っぺらく聞こえそうなこういうセリフが、リアリティを持って聞こえるのは時代背景だけなんだろうか、と最近思います。ちょっと昔の冒険小説を学びます
2021/07/31
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
アフリカのとある国の独裁政権を倒す為に「戦争のプロ」を雇ってクーデターを企てるという冒険アクション。このモデルはフォーサイス自身だという噂もあるが、果たして本当なのか?リアリティに富んでいるからそんなことが言われるのかもしれない。★★★★
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