ポルトベーロの魔女 (角川文庫)
ポルトベーロの魔女 (角川文庫) / 感想・レビュー
コージー
★★★☆☆『ポルトベーロの魔女』と呼ばれた、不思議な力を持つ女性アテナの半生を描いた作品。アテナを知る身近な人々の証言を元に構成されている。生みの親に捨てられ、満たされない心の空白を埋めるために、自分探しをはじめる。そして様々な人々との出会いの中で、ある‘’力‘’が覚醒することで、自らの人生の使命を見つける。魔女というか、現代でいう教祖のような存在だろうか。不思議な体験をする場面の克明な描写は、あたかも本当に体験したかのようなリアルなものであった。
2023/01/09
まこ
自分のことを知るには他人からの評価を聞くのが一番良い。アテナの人となりは、彼女の考えに戸惑いこそするけど悪意がない。死んだはずのアテナは生きていた?そもそも、聞き手は一体誰?。生まれや家族のことで翻弄された女性だったアテナが、終盤の展開で全くわからない振り出しに戻った感じ。
2022/07/21
Roti
自分自身とは何かを探索しつづける女性が出自を探し当てたことを契機に、精神に目覚め、母神が憑依し人々から神託者として崇められていく話。話は関係者の口を通して、ある人物の記録として語られる。作者の作品らしく、箴言が散りばめられ作品に輝きを持たせている。関係者から描き出す人物像はどこか語るひとの主観が入り、ゆがめられ、そして語られる人の神秘性が増す。語られるのは『仮面(ペルソナ)』だけなのだ。
2014/03/21
ががが
「ポルトベーロの魔女」と言われたアテナの半生が綴られた物語。ルーマニアで生まれ、レバノンで養子に取られ、イギリスで育った彼女がどのようにして霊的体験を積み、ジャーナリズムが騒ぎ立てるような事件を起こすようになったのかが、複数の人物から語られる。宗教的な文脈は理解が難しく、スピリチュアルな感覚にピンと来ないので、カルトの勃興を読んでいる感じがした。ところどころアテナは超越的な次元で何かを理解しているようだが、複数の視点で彼女を語らせる手法が彼女のミステリアスなカリスマ性を増幅させ、物語に奥行きを与えている
2023/01/17
詠月
“作法とは作品が完璧に仕上がるために一番適した姿勢だ。(中略)姿勢は単純で素朴であればあるほど美しい”(110頁) そういう姿勢で信仰をもっていても、寛容な社会の秩序が伴っていない限り無意味な気がしてくる。魔女たちの叫びが新しい教皇の耳に入るだけでは世界が変わると思えないけど。
2013/04/21
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