犬の力 上 (角川文庫 ウ 16-4)
犬の力 上 (角川文庫 ウ 16-4) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
ドン・ウィンズロウは初読。凄まじい世界だ。おそらく、これは麻薬カルテルやマフィアのリアルな姿を伝えているのだろう。しいて言えば、DEA捜査官のアート・ケラーが主人公ということになるのだろうが、イタリア系、アイルランド系の悪漢たちが何人も登場し、群像劇の感をも呈している。さらにはそこに警察をはじめとした捜査当局、軍隊、政治家の思惑が絡み、一層複雑で混沌とした世界を醸成してゆく。また作家は、ノーラをはじめとした美女を配することも忘れない。その一方で司教(後に枢機卿)のファン・パラーダをマフィアをも⇒
2019/07/14
ミカママ
【原書】二度目の挑戦。なにせ登場人物が多い、彼らの呼称がそれぞれ複数あったり、中南米の地理や歴史の知識もほぼ皆無…二重苦三重苦の状態から、生まれて初めてメモを取りながら読む、という手法を取ってみた。それでも足らずに、Wikiの登場人物一覧とも照らし合わせ。効が奏して、現在8章だがどんどん面白くなってきたぞ。このまま一気に。実際に読んでいるのは: https://bookmeter.com/books/2667699
2020/06/08
W-G
『ダ・フォース』も相当面白かったのに、軽々と越えてくる勢い。数行ごとに視点人物が切り替わり、ひたすら事実のみを記すような文体は、決して教科書に載るようなものではないのに、途方もない熱量で巻き込んでくる。上巻ではまだまだ各人物の紹介を兼ねているが、それでもじゅうぶんに錯綜して、あっという間に善悪/敵味方が裏返る。特にカランの存在が後々鍵になってきそうで気になる。かなり緻密に陰謀が絡み合っており、尻切れトンボだとガッカリだけれども、これだけ話題になっている作品であれば心配はなさそうで、安心して下巻に行ける。
2018/04/23
徒花
メキシコを舞台に、麻薬カルテルやイタリア系マフィア、執念に憑りつかれたアメリカの麻薬捜査官、コールガールなど、それぞれの人物がいろいろな思惑や欲望を持って動き回るハードボイルド群像劇。かなりのボリュームで登場人物がやたら多いが、「比較的」読みやすい。ただ、知り合いからおすすめされて読んだのだが、帯文に「このミス大賞」と書いてあったのに、どこからミステリーになるのかというのが気になった部分ではある。結論的に言うと、本作は別にミステリーではない。
2017/07/29
みも
日本人的倫理観を礎にして向き合うと、徹頭徹尾打ちのめされる。これはやはり日常的に麻薬が蔓延り、本物の銃声を知る国民なればこその小説であろう。アメリカ・メキシコを中心に、中南米各国を股に掛けた麻薬ビジネスの実相と、善悪では到底括れない錯綜する凄惨な愛憎劇を、圧倒的リアリティで描出する。襲撃シーンはもとより拷問描写もあるので、これらが苦手な方にはお薦めしない。唐突な場面変転と共に主観も移るので、混乱は否めないのだが巧緻な人物造形が確固たる個性を創出し、各人の激情が推進力となり読み手の心を強引なまでに引っ張る。
2021/03/16
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