アンジェリーナ 佐野元春と10の短編 (角川文庫)
アンジェリーナ 佐野元春と10の短編 (角川文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
佐野元春の歌に触発されて書かれた短篇が10篇。佐野元春というのはシンガーソングライターのようだ。有名な人なのかも知れないが、私は知らない。それもあって、長い間積読状態にしていた。ただ、結果的には幸いにも佐野元春と小説とはあまり関係がなさそうだった(ファンの方、ごめんなさい)。小説そのものは、小川洋子さんのスタイルそのもの。一つ一つは短いので濃密な世界は現出しえないが、なかなかにしゃれたスタイルだ。好みは分かれそうだが、篇中では「クリスタルタイム・イン・ブルー」が、もっとも小川文学の結晶を伝えるだろうか。
2014/09/09
Vakira
物語は既にここにある。小説は言葉だけで成り立っている。しかしその源は言葉の存在しない場所で発生している。1枚の絵だったり、音や風景だったり。言葉も読まなければただの記号であるし、音に連続性を与えるとメロデイーとなる。瞬間から発生するイメージに時間を与えると物語となる。この本、大好きな佐野元春さんの10曲からイメージされた珠玉の短編集。僕にとって夢のコラボ。読友さんのレビューで見つけて思わず歌いだす。流石、洋子さん。元春さんの詩から想像する世界とちょっと違った物語が始まる。でもちゃんとリンクもしてます。
2022/03/03
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
言うまでもないことだけど、音楽にはいろんな効用があります。なけなしの勇気を搾り出す栄養剤として、哀しみを癒すみえない手として、記憶の扉を開く鍵として……。創作者には想像力を刺激する作用をもたらすのでしょう。小川洋子さん×佐野元春さんの化学反応。佐野さんの音楽をモチーフに綴られた10篇の小説は、幻想的な味わいが色濃い世界。所々に挿し込まれた歌詞は、物語の誕生を待っていたようにピタリとはまります。そして既視感。僕だけかもしれないけど、二人の創作者が生んだ物語は村上春樹さんの描く世界に似ているように思えました。
2014/07/03
ぶんこ
佐野元春は青春の思い出。楽しみに読み進めました。小川さんの世界が強すぎて、佐野元春の世界が奥に引っ込んだように感じる作品が多かったです。個人的に佐野元春から連想するのが楽しいドライブ、青い空、旅先のときめきだからでしょうか。お二人とも好きなのに、なんだか違和感をずっと感じていました。
2017/12/18
shizuka
佐野元春さんの音楽は聴いたことはないけれど、小川さんの小説になって出合うことができた。小川さんの小説はいつもとても透明。日本が舞台なのに、どこか外国にいるようなそんな風が吹いている。10編のお話。あるお話の元になっているものもあった。ああ、だから懐かしいって思ったんだ。「アンジェリーナ」「バルセロナの夜」「誰かが君のドアをたたいている」「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」そして「また明日…」がお気に入り。小川さんが描くどこかの町で、小川さんが生み出した登場人物たちと会ってみたい。きっと気が合うと思うんだ。
2016/01/22
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