しのびよる破局 生体の悲鳴が聞こえるか (角川文庫)
しのびよる破局 生体の悲鳴が聞こえるか (角川文庫) / 感想・レビュー
YO)))
<人びとを病むべく導きながら、健やかにと命じる>システム,或いは『器官のない身体』としての資本主義.外的な存在としてあるだけではなく,既に我々の内部/心性に深く根付いてしまった末期のそれに,果たして人間の生体は耐え得るのか.経済の回復を愚直(或いは浅薄)に望むのではなく,人間とはどうあるべきなのか,内面を反復して思索することこそ今求められているのではないか.真摯にして強靭な問いかけに満ちた警鐘の書.
2012/09/18
魚53
価値があるか、儲かるか、生産性があるか。全て資本主義の尺度で測られ、蔑ろにされる人間。普段生活していて、さも当たり前かのように語られ、判断していることに疑いを挟むことの重要さ。本当にそうなのかと。言葉さえもが商売の道具にされ、上滑りの聞こえの良い言葉がもてはやされる。内実は伴っていない。マチエールという言葉。質感ということだが、デジタル化され真で正であるかのように見えるものに無いものだ。それを取り戻すこと。人間のためのシステムであってシステムのための人間ではない。言葉も同様だ。鋭い警告の書。何度も読む。
2023/01/19
かおる
とりあえず読み終えたので登録。再読してます。生身の「人」より優先される経済。世界の回転が速くて手に負えなくなりつつあることを実感しているせいか、激しく同意できる一冊でした。人間の生活のために「もの」や「金融」があるのではなく、市場活性化のために人間のほうが狂躁的に消費させられる「奇怪な生命体」に変えられ利用されていたんですね。今に当てはめると「新型コロナウイルス」と経済の関係でしょうか。感染拡大=人の命なんてどうでもいいから観光に出かけてお金使ってよ⁈
2020/08/03
gilzer
サブプライム・ローンの破綻等を契機とする世界的金融危機。これをどう見るか。単に景気の回復だけが問題だと見る向きもあるが、著者はこれを資本主義の末期症状と捉える。ただし、経済システム論だけの問題ではない。人間性の問題でもある。つまり、問題は既に存在していたのだが、それが金融危機によって剥き出しになったにすぎない。著者の省察はラディカルな資本主義批判を基礎に持つが、それを支えるのは難解な理論や概念ではなく極めて人間的な感性であり、例えば、路上生活者に対して痛みを感じるかどうかといったことである。
2013/02/07
クッシー
資本主義によってもたらされた価値観の崩壊について述べられている。「ことばが表意しないというか、ことばか表意するものがかつてとまったくちがっている。「エコ」や「〜にやさしい」ということばもそうですが、じつはモノを売るとか別のインテンションがある。」確かにその通りだ。言葉そのものの字面をそのまま受け止めてしまう僕にとって考えの浅さを実感させられた。こんな時代だから、人間的な価値の問い直しをすべきであると、訴えているし、それは僕も共感している。
2021/12/04
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