夜光虫 (角川文庫)
夜光虫 (角川文庫) / 感想・レビュー
W-G
まさかの続編が出たので久々に。馳作品の中でもかなり好きな一冊。著者の初期作品は、刺激が強いかわりに続けて読むとまぁ飽きるのも早いが、この作品は着地点が少し異質でインパクトがあった。野球を題材にしているという事が原因で、読んだのは割と後の方だったのだが、妄執を叩きつけてくるような文体は他作品と比較しても強めに訴えかけてくる。『不夜城』や『漂流街』と比較すると主人公の加倉は一見”普通”なのだが、狂いだしてからの疾走感と振れ幅は読みごたえタップリ。この時期の作品はプロットもしっかりしていて重さも申し分ない。
2017/05/13
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
馳さんは、非常に多くの気になる作品を世に送り出し、テーマや作風もバラエティーに富んでいますが、やはりノワールものは外せない。人間の欲望と共にある暴力、そして揺れ動く愛と憎しみ。破滅への道をただただ突き進むしかなかった。『不夜城』だけではない、本作、台湾を舞台にしたもう一つのアジアン・ノワール。乾いた狂気に触れたい方は、夜の街に蠢く虫たちの放つ無数の光、800頁超えの大作『夜光虫』を是非!
2021/11/11
k5
平成ハードボイルドシリーズ。『不夜城』が徹底した欠乏の物語であったことを思うと、かつて日本のプロ野球でノーヒットノーランを達成した主人公の加倉は、落ちぶれていても比較的恵まれたスタートです。永遠に埋まらないマイナスを埋めようとする劉健一に対して、基礎能力の高い加倉は、欲望の対象となるようなプラスを探すのですが、そもそも欲のない、あるいは自分の欲望を知らない彼を本質的に惹きつけるものはない、というのが主題かなあ、と思います。後輩の妻に対する執着が描かれるんですが、『不夜城』の夏美ほどの重みはないですし。
2020/08/08
Tetchy
今までは東京の裏社会に暗躍する外国人の世界を舞台にしていたが、今回は逆に異国の街の暗黒世界に身を置く男を描き、生き抜くために喘ぐ姿を活写する。それまでに発表されていた作品と180°設定と舞台を変えた。そして扱う世界はなんと台湾野球界。台湾野球にはびこる八百長と野球賭博を牛耳る黒道というマフィアの抗争に巻き込まれる野球選手加倉の物語。しかしそんな物語も結局皆殺しの結末になってしまうのが残念。呪われた血を持った男が人殺しの螺旋に嵌り、次々と周囲の人間を殺していくという物語は基本的には変わらないんだよなぁ。
2012/05/26
まーしゃ
この頃、気候のせいか何故か本が読み進まないのとこの作品の続編、『暗手』のおさらいの為に再読。シラを切れ、誤魔化せ、丸め込め。加倉が野球選手として堕ちたのが台湾球界。そこで待ち構えてたのはマフィアとの八百長試合。友人親兄弟と次から次と殺して行きそして… 加倉は何処に行くのか… っとやっと続編が出ました。 やはり馳星周ワールドは犬やサッカーではなく騙し騙されダークノワール。ちょっとこのままテンション上げて暗手を読みたいと思います。
2017/07/25
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