玩具修理者 (角川ホラー文庫)
玩具修理者 (角川ホラー文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
SFホラー作家・小林泰三のデビュー作品集ですね。表題作『玩具修理者』はシンプルですが生理的な嫌悪感が込み上げてくる悪夢の如き名作ですね。近所に住む玩具修理者は、どんなものでも一旦全てのパーツをバラバラにして最後には治してくれる。死んだ猫でさえ治してくれるのだから、姉の私は誤って死なせてしまった幼い赤ん坊の弟の死体を持って行くのだが…。まあ意外性はそれ程ではありませんが、著者が考え出した「悪夢の童話」と言うべき1アイディアの勝利ですね。玩具修理者の呼び名「ようぐそうとほうとふ」も不気味さを盛り上げています。
2022/08/04
青乃108号
短編【玩具修理者】は昔貸本で読んだ日野日出志の漫画の様、白や黄色やオレンジの汁にまみれたシュールな恐怖。シンプルな物語だが強烈なインパクトを残す。続けて次の中編【酔歩する男】を読み始めるが。これは、俺の様なメンヘラは読んでは駄目な物語だった。ぐるぐる、ぐるぐる。読んでも読んでも終わりの見えない絶望的な反復。このまま俺が、ずっとこの物語に取り込まれたままになってしまいそうな恐怖。ああ、やっと終わった。ところで今、風呂から上がってきた妻は、俺の知っている女だろうか。恐る恐る、振り返る。
2022/06/12
stobe1904
【ホラー作品集】短編と中編の2作から構成されている作品集。著者の作品は初読みで先入観なしに読み始めるが、徐々にこの作品の世界観に捕らわれ、悪夢のような目眩を感じつつ、一気に読了した。独特の粘着感のある作風と雰囲気はインパクトが強烈で熱狂的なファンが多いのも納得。★★★★☆
2024/09/02
nobby
なかなか気持ち悪くも興味深く読んだ後は、周囲に疑心暗鬼を生ずるばかり…表題作「玩具修理者」は、40頁程のボリュームながら結構グロく不可思議でいて、最後にゾクっと落とす切れ味は抜群。もう一編「酔歩する男」はいわゆるタイムリープ物だが、その事象への憧景を徐々に躊躇へと変えさせる恐怖は見事だ。その時間や意識といった概念の理論付けを完全理解するには至らないが、それでも実在と不実在、波動の発散と収束、原因と結果などの関係性は体感出来たつもり(笑)明朝、目を覚まして見るのは虚構あるいは現実か、不安ながらも目を閉じる…
2018/03/06
nanasi
表題作を含め短編が二つ収録されています。カバーデザインはT.KITAHARA COLLECTIONです。井上 雅彦さんが解説をしています。個人的には「酔歩する男」が面白かったです。
2013/08/19
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