人獣細工 (角川ホラー文庫 59-2)
人獣細工 (角川ホラー文庫 59-2) / 感想・レビュー
nobby
短編3つともタイトルそのまま分かりやすい(笑)ヒトの倫理を問い、伝説の怪物を想起させ、呪縛と精神崩壊の狭間を行き来する様に惹き込まれた!「彘(ブタ)の心臓と彘の肝臓を持つ人間は人間なの?」読み手を混乱させ答えを出せない中で目にするオチの鋭い「人獣細工」8才少年の必死の吸血鬼との戦いにドキドキ止まらない「吸血狩り」何やら『芸術論』なる固い内容でいて小汚い文献から生じる謎の不幸や惨劇にゾッとさせられる中、ハードウェアとソフトウェアからの説明から導かれる結末が見事な「本」全て違った作風でいて存分に楽しめる快作♬
2020/09/11
ちーたん
★★★★☆表題作含むSFホラー短編3話。①『人獣細工』…病弱で体中移植だらけの主人公・夕霞。彼女の体にはあらゆる豚の臓器が。医者であった父の死後、遺品整理を始めて…◆「ひとぶた」と悩む彼女は…やっぱりそう来たか!②『吸血鬼狩り』…夏、祖父母の家に集まるいとこ達。優ねえちゃんを守るため僕は吸血鬼を退治する!◆少年の冒険譚。ラストは…リドルストーリー?③『本』…小学校の同級生から届いた彼の本。その本を受け取った同級生が次々と…◆呪い系ホラーで1番読み応えあり!これで私もインス・・😇親方様〜〜!!
2020/08/18
HANA
短編三作を収録。最初の表題作からいきなりやられる。独特の陰鬱な一人称の文体に動物との内蔵移植という主題、そしてHPLを思い出させるラストまで全編から嫌な空気が漂ってきて実に満足。続いての「吸血鬼狩り」は大体筋が読めたものの、読み終えてしばらく経って『ねじの回転』的な解釈な解釈に気が付いてこれも満足。で最後の「本」も序盤は『ドグラ・マグラ』のチャカポコを思い出してきつかったものの、それを過ぎては一気読み。何よりこれを電子書籍で読んだ皮肉に笑みを抑えることができない。久々に嫌さを十分に味わう事が出来ました。
2018/12/01
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好みなものとなれば、やはり表題作の人獣細工。臓器移植には、豚の臓器を使うことが主流となった世界。「人間の肉体を取られてさらに豚の肉体を与えられた私が、人豚でないとどうして言えるの?」彼女の切実な叫び。そして予想は出来たものの、ラストは悲しいものだ。やっぱり愛はなかったんだな。そして好みではないけれど、がっつり引きこまれたのは最後の「本」。最初はつまらないと思っていたのに段々と歪み、狂っていく姿に興味をそそられた。久しぶりにホラー作品を読んでいる感覚になり、途中からは読み終わることに恐怖を感じた。
2015/04/09
まるほ
著者の作品は『玩具修理者』に続き2冊目。趣きが異なる3編で構成。▼遺伝子操作技術による異種間の臓器移植を題材に、倫理観を揺さぶりまくる『人獣細工』。ラスト一行の衝撃は相当なもの。▼『吸血狩り』夏休みに帰郷した田舎で8歳の少年が成し遂げたこと。無垢な純真ゆえの暴走が引き起こすホラー。▼狂気と幻想に溢れている『本』。話自体も支離滅裂なのに、なぜかどっぷりとハマり読み進めてしまう。最後の最後でもう一度世界観をひねってくる。読了しても訳がわからないのに、なぜか強く印象を残す。実に不思議な作品。
2021/08/03
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