戦う哲学者のウィーン愛憎 (角川文庫 な 35-1)
戦う哲学者のウィーン愛憎 (角川文庫 な 35-1) / 感想・レビュー
H2A
33歳で留学して博士論文を提出する4年間滞在したウィーンで経験した現地ヨーロッパ人たちとの確執の記録。なにもそこまでしなくても、と思うのは日本人だからか。差別、偏見にここまで妥協せず闘えるのか。相手から非難を受けた時にも臆せず自分の正当性を主張するのが国際基準か。
2020/10/10
すぎえ
東大哲学科、法学部の2学科を卒業後、33歳でウィーンに留学。永遠の学生、長いモラトリアムが感じられる一冊。物事がうまくいくように考えるのではなく、考えた末に正しいのかどうかを考えて行動する著者は西欧人のアジア・アフリカ系の人に対する接し方にどうしても納得がいかず日々対立してばかり。僕は日本人的日本人だから空気を読んで、対立を避ける人間だ。対等に主張して渡り合っていくのってこんなにもつかれるのかとうんざりした。もちろん他人事として楽しんだ部分もあり。いろいろと垣間見れる一冊。表紙が御洒落。
2009/11/29
よく読む
中島義道が強くなった原点は、ウィーンで私費留学生として過ごす日々で味わった苦労や不条理にあった。ヨーロッパ人の、自分勝手に見受けられる主張や言動、そしてそれが受け入れられている様子には驚くばかりだ。屁理屈であっても自己都合を集団や他人にぶつけてていく強さや逞しさは、それがときに浅ましくとも、我々日本人が見習うべき文化や国民性であるように思われる。当然、私もそのように今後も努めてありたい。本書にある理不尽な経験の一つひとつが、騒音に抵抗する「うるさい日本の私」や、「怒る技術」の言動につながっていくのだ。
2018/02/03
左手爆弾
個人的に、中島義道の書くものは好きではない。だが、本書は非常に勉強になる。本書の核は、ウィーンないしはヨーロッパ人の「真理より権利」(p.192)の態度にあるだろう。これはイェーリングの『権利のための闘争』などでも同様だが、基本的にヨーロッパ人は自己自身の内なる権利に常に忠実であろうとする。権利を害されたとする感覚が、日本人よりも遙かに重い。エボラ出血熱が流行しているにもかかわらず「移動の自由は権利だ」と述べた欧米人女性をテレビで見たが、それにも通じるだろう。
2015/03/11
ゆうき
凄烈、鮮烈。この人、なんだかんだ言ってどの人よりもマトモに生きてるよなあ。どこにいようと、いくつになろうと。それはもう、奇跡的なほどに。
2011/12/13
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