手と目と声と (角川文庫 は 20-9)
手と目と声と (角川文庫 は 20-9) / 感想・レビュー
ken
灰谷健次郎の眼差しは虐げられたものたち、顧みられないものたちに向けられ、彼らの悲しみや優しさが描きだされる。収められている短編のいずれもそんな弱いものたちの悲しみ、その悲しみが生む優しさが、温かい筆致で描かれたものだ。また、灰谷自身の教師体験やその実感がもととなった作品があったり、沖縄に対する思いが色濃い作品があったりと、灰谷健次郎文学の縮図のような趣でもある。障害者の子どもたちを描いた「声」がとくに良かった。畳み掛けるようなラストシーンが悲しくて美しい。そして読後の余韻は言いようもなく切ない。
2018/12/29
ももたろう
教師は、大人の価値尺度で子どもを見てはならない。子どもの立場にたった真の思いやりとは。教育現場だけでなく、家庭教育でも大多数の大人が忘れがちな思いやりの大切さを身に染みて感じられる作品。
2012/04/07
みけのすずね
中学生たちのこころの叫びや友を思う気持ち。勉強をできない者はできるようにしてくれた人を先生と呼ぶだろうが、かなしいことがありすぎて勉強なんか手につけない者は、そのかなしいことを一緒に考えてくれる先生がええ先生というんだ…最初二つは在日朝鮮人や戦争の哀しみが、時節的にダイレクトに伝わってきた。支援学級の声が出せない子どもたち…マサコは怪我した友達を心配したり仏さんとお話していたり、たけしはサンダルにお母さん行かないでと言ったんだね。最終話「友」、私もこんな中学生だった。素直な感動を出せる大人でいたい。
2021/08/07
縁栞
★3 《 読む人の心に豊かな光をやどらせる、宝石のような四編の小品 》 この物語を小学生、中学生の頃に読めていたら、きっと私の人生は変わっていたんだろうなぁ。 人を変える一冊です。
Ichiro Toda
灰谷健次郎って教科書だなあと思った。難しいことは何も書いてないし、とてもわかり易い言葉でやさしい。それでいて一本の筋が通っていて、厳しい眼が光る。4つの小品とも呼べるほどの短篇集。教科書にも載っていそうな道徳的な作品。小学校の時昼下がりにみんなの前で音読していたことをふと思い出すような作品が収められている。挿絵がそれを一層教科書らしくさせるのだと思う。ラストの声が印象に残った。自分の見てる凝り固まった現実を唯一だと思ってしまう大人、それから自由でいるが影響を受けてしまう子どもたちの対比がグッときてしまう。
2015/03/05
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