岡山女 (角川ホラー文庫 82-3)
岡山女 (角川ホラー文庫 82-3) / 感想・レビュー
yoshida
明治末期の岡山。妾のタミエは囲われていた宮一に無理心中を図られる。宮一は亡くなる。顔面を宮一に切られたタミエは左目を失う。生活に窮するなか、光を失った左目は死霊や生霊が見始める。タミエは霊媒師を生業とする。様々な人々がタミエに相談事をする。大概は消えた人物の消息を問う。友人、義母、実母、駆け落ちした男、神隠しにあった子。それぞれの歪んだ関係や思い。その湿り気のある質感が、岩井志麻子さん特有の恐怖を生む。「勧商場」だけは掌編が集まり、やや不満足。ひとつの話しを描く方が恐怖や狂気が募り好み。安定の連作短編集。
2023/05/21
ラルル
「岡山清涼珈琲液」は読んでいても虫唾が走る話なのにどこか綺麗で淫靡な香りがしました。でも今更ですが岩下志麻子さんの性癖は私には合わないと確信。売春・浮気・おばさんと少年の肉体関係…どれも背に虫がw それでもぼっけぇきょうてぇや瞽女の啼く家のようなこれぞという作品に出会いたい思いを捨てきれず、岩下本を手にとってしまう日々です
2014/12/31
メタボン
☆☆☆★ 心中の道連れとして情夫に日本刀で切られ片目を失った妾のタミエが霊媒師となって依頼者の願いを聞く連作集。明治時代の薄汚れた空気感と岡山の土着性が相俟って岩井志麻子らしい独特の怖さが引き立っている。
2022/08/08
眠る山猫屋
再読。思いの外、素晴らしい内容でした。現世と幽世のはざま、新しい文化が押し寄せる岡山を舞台に息苦しい、生き難い日々を過ごすタミエ。いついなくなっても構わない、そんなタミエの想いが切ないです。そんなタミエのもとに現れる様々な人物たち。生きている者、向こう側にいる者。思い残したことがあっても無くても、人間は自分の思いを第一義に訪れるもの。そんな人間たちこそが、因業でなによりも哀しく無惨なのでしょうか。お奨めしたい一冊でした。
2015/09/13
じゅむろりん
「ぼっけえ,…」に続き岩井作品2冊目。囲われた男に日本刀で片眼を奪われたことで霊力が宿り,妾から霊媒師へとなったタミエ。依頼人の背後に見え隠れする人間の浅ましさ・業の深さが真相解明後も余韻を残します。「悪意を持つのは人間と元は人間だったもの」という言葉が印象的。ひたひたと静かに迫ってくる恐怖感が癖になる短編集でした。
2019/07/29
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