クォン・デ ――もう一人のラストエンペラー (角川文庫)
クォン・デ ――もう一人のラストエンペラー (角川文庫) / 感想・レビュー
ヨーイチ
森達也に興味があるなら読んだ方がいい。というか発端から最終までに「作家」としての森達也が濃密に感じられる。無理に分類すれば「埋もれた歴史、人物」物になるのだろうが、予想もつかない展開は「森達也自身」のドキュメンタリーにもなっている。資料の少なさを埋めていると思われる、些か感傷的なシーンは通俗的ではあるが彩りとしておこうか。ちょっと再現ドラマ風だけど。日本の近代史の傍流、大アジア主義とか中村屋が絡んでくる。成果を出せなかった革命とか独立運動とかテロリズムが浮かび上がる。続く
2019/11/03
金吾
クォン・デについては全く知らない人物でしたので、興味深く読むことができました。当時の日本が個人として支援はできても、国家としてはできないというのはなんとなくわかるような気がしますが、目前のみを考えることなく他の手段もあったのではとも思いました。
2023/08/11
紡ぎ猫
ベトナムのことはベトナム戦争くらいしか知らなかった。ましてや、かの国にかつて王朝があり、フランスに支配され、独立のために激しく戦ったなど。そして、その王朝の末裔が日本で生き、死んでいったという事実を知っている日本人はほとんどいないのではないか。知られざる戦争のもう一つの歴史。学校で習わなかったことはまだまだ山ほどある。
2014/07/25
Yukiko
ベトナム最後の王子、クォン・デ。日本に殺されたようなものなのに、日本人は誰も知らない。私も知らなかった。この本が著されて、クォン・デの供養になったと思う。私も日本にいる自分の立ち位置からくる罪悪感が少し軽くなる。また、クォン・デを含めてこの本に登場するすべての人々が魅力的だ。それがこの本の魅力だと思う。幕末明治生まれで戦前にリーダーシップをとった人たちの「敬天愛人」への心酔、「情」の厚さ。戦後は評価されなくなったが、見直すべきだと思う。かれらはクォン・デの飼い殺しにされた責任の一端を担っているけれど。
2019/08/03
yutaro13
ベトナム旅行前のお勉強。ファン・ボイ・チャウや東遊運動は知っていても、彼について知っている人はどれだけいることか。1951年、杉並区の粗末な借家で孤独に死んだ老人。彼こそ45年前にフランス植民地からの独立運動のため来日したベトナムの王族クォン・デであった。日本政府に翻弄され続けた上に、現代の日本人は誰も彼を知らない。この二重の意味での悲惨さが著者を取材に駆り立てるが、現代のベトナムにおける彼への評価について、待っていたのは悲しい結末だった。フエの王宮では、歴史に忘れさられた悲運の王族に思いをはせてみたい。
2018/04/25
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