僕たちは歩かない (角川文庫 ふ 18-6)
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僕たちは歩かない (角川文庫 ふ 18-6) / 感想・レビュー
いたろう
クリスマスに関連したファンタジーと聞いていたので、クリスマスイブに読んでみたが、クリスマスの場面はワンシーンのみ。だが、その場面が、小説の中で重要な位置を占めている。1日が24時間制の東京から、26時間制の異世界の東京に入り込み、一緒に料理の研究をする<研究会>の料理人たち。クリスマスイブの晩、26時間制の東京のレストランで、特別なクリスマス・メニューをある人に饗した彼らは、その人に教えられ、山手線の「ありえない終電」で、ある場所を目指す。いつも使っている山手線が、異世界の入口に思えてくる、不思議な物語。
2019/12/24
とら
何もかもが独特。”何を”とは限定出来ない。何もかもが独特。「26時間制の東京」の同じ厨房で料理を作る僕たちの物語。個人的に、最近やっと東京に結構な頻度で赴く様になったので、必然的に電車、特に山手線なんかはよく乗る様になって、だから61分で一周するだとか29駅あるだとかは勉強になった。ただの一般常識なんだろうけれど。でもその知識を小説で、しかも特にこの小説で得た自分はなんて幸せなんだろう。これからちょっとでも東京に対してこの小説の登場人物達の様な目線で見てしまうのは否めないけれど、でも素敵なことだとも思う。
2013/08/26
春が来た
これは僕。僕たちの物語。ここは東京。2時間多い東京。今日の予報は大雪。余白に降る雪は冷たい。あちら側よりずっと寒い。動く。動き出す。でも僕たちは歩かない。けっして。薄くて挿絵があって時間をかけずに読める。そしてクセになりそうな文体。しかし、どうもぽろぽろとなにかを零してしまっている気がするしそうでもない気もする。幸い本というものは時間さえあれば何度でも読める。山手線に乗らなくてもゼロ地点を越えられる。調理されたインスピレーションで。そうだろ?
2021/01/13
たぬ
☆3 「26時間制の東京」はなかなか面白いし足が地面についたら終わりってのは白線だけを通ったり他所のお宅の塀に張り付きながら進んだりした小学生時代を思い出した。でもそこまでだなあ。1時間もかからず読み終わるから時間つぶしにはなるけど。文体も急かされているようでなんか落ち着かない。
2021/10/17
ちぇけら
僕たちは移ろっている。東京の。東京の雪の。東京の雪の終電で。つまり、使命を与えられている。誰に?誰かに。しかし、自分で、自分に。いいか。声に出さずに僕たちは確認する。確かめあう。通じあっていると感じる。想像するんだ。ひとりひとりが心で呟く。だから、あらゆる場面にそなえて。消えてしまうかもしれない。誰かが言った。そうかもしれない。じゃあ、やめるか?誰かが言った。僕たちは全員で首を振った。迷いはない。進むことに。進んだらもう元には戻れないかもしれないことに。真っ白な廃墟へ向かって。つまり、救うんだ。僕たちは。
2019/10/06
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