疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫)
疲れすぎて眠れぬ夜のために (角川文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
ちょっと奇妙なタイトルだが、中身はいつもの内田樹調。幾分軽いのは口述筆記から書き起こされた故であるらしい。「個性」、「オリジナリティ」などとはいっても、その大半は既存の文化層のマジョリティに従っているだけとそ指摘は、言われてみればいたってごもっとも。この人の思考法は、大多数の指向をそれとは違った見方をすることで、事柄の本質を見えやすくするもの。村上春樹論や、戦後世界の構造を作ったのは三四郎の世代の人たちだったとの指摘は、この人ならでは。身体論の復権といった主張は、いかにもだが、これまた正論であろう。
2016/07/25
やすらぎ
愛情は試すものではなく焦らずじっくりと育てるもの。我慢することが器量の大きい人間なのか。価値観が狂うような体験は目に見えない自らの何かを損なうことがある。独特の視点と冷静な語り口。本題、疲れすぎて眠れぬ夜に読むと更に眠れなくなるだろう。らしさとは何か。自分らしさとは。常に心清くはいられないが心卑しい人間にはなりたくない。品のよい人は節度を知る人。適度にリスク回避し能力を最大限発揮する人。不条理な世界を生き延びるための知恵とは礼儀正しさである。心耳を澄ませて無声の声を聴く。丁寧に柔らかに構えていようと思う。
2022/10/10
kaizen@名古屋de朝活読書会
疲れすぎて眠れぬ夜になってしまったらこの本を読もうという意味。上を目指すよりも,自分の限界を知ったなかで,頑張ることを限定する。あれもこれも頑張ろうとするから疲れすぎる。愛情、利己主義など,構造的に相似な概念で一貫して説明することにより,理解のきっかけを掴んでもらおうとしている。うちだたつる。仏文専攻。心理学ではない。解説と言う名の「うちだたつるとの出会い」銀色夏生。発見角川
2013/09/07
はっせー
この本は色々な価値観という豚骨をじっくり煮込んだスープのようだ!そのため灰汁もでるし旨味も出る。人によっては苦手なものかもしれないがでも癖になるような本になっている!この本は仕事や性別、個性といった議論の的になっているものを取り上げて論じてある。総じて言うなら我慢をするな 無理をするな 人間は簡単に壊れるという話であろう。だがその中にある我慢や無理は何故してしまうのかを深く考察していくと個性や性別の問題にあたる。それについて深く考察することによって自分について知れるようになる。なかなかの灰汁が出ている!
2022/08/10
うりぼう
1日、貸ホールから「グリルみやこ」で話した10時間分のテープが産みの親。その時の内田先生が立ち顕れる。二十数冊の空手形を振り、「語り下ろし」という荒業に惹かれて、思いを語った。「ちょっと、真面目すぎない?ホントの利己主義になって、ガマンしないの」と優しい言葉をかけ、時代と環境がその人を作るという構造主義的分析で伐る。輸入もののモデルからの離脱。自らを他者化する視点。「らしく」は楽さ。「寅さん」のいない核家族は、不完全。「弔い」方の工夫が未来に通じ、自由にさせると同じになるので、多様化のための「型」が大事。
2010/09/27
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