私という運命について (角川文庫 し 32-4)
私という運命について (角川文庫 し 32-4) / 感想・レビュー
みも
奇を衒う事のない正統的な日本語で、丹念に紡ぎ出す人生の機微。理不尽な災禍に見舞われても、不測の事態に翻弄されても、生きてゆかねばならない。折々に織り込まれる世相に自分の人生を重ねれば、包含した人生の真実と本質が、凪いだ海を眼前に佇むような静かな感動で包み込み思索の深海へといざなう。人生は選択の累積で出来ている。時にその選択が誤ったように見え、掌から零れる砂のように幸福を喪失したと感じる事もある。それでもいつか幸せのぬくもりを素肌に意識しつつ、笑顔で運命を受容出来る日が来ると信じていたい。#ニコカド2020
2020/12/29
遥かなる想い
「白石一文」は好きな作家だが、比較的初期のころに比べてほとばしるような筆力がなくなってきているように思う。冬木亜紀を主人公とした、女の一生を白石一文らしい視点で書いてはいるが、『一瞬の光』で見せていたような読者の心をえぐるような文体ではなくなってきている。
2010/06/02
しんたろー
『ほかならぬ人へ』を5年以上前に読んで以来の白石さん。読友さんが絶賛だったのが気になって…成程!愛し方と生き方を改めて考えるのに打ってつけな良作だった。主人公女性の29歳~40歳の生き様を描きながら、登場人物たちの人生観が語られるが「そうだよなぁ」と思う部分が多々あって、人生の機微や運命の綾などに想いを馳せた。少々哲学っぽい言い回しがあって苦手な人には難かも知れないが、ドラマチックなラブストーリーは先が気になるし、平成半ばまでの時代背景も丁寧に描かれているので、自身の想い出と被って感慨深いものがあった。
2019/07/23
優希
面白かったです。運命というのはあらかじめ決まっているのかということについて考えさせられました。女性にとって恋愛、結婚、出産、死とは何かを揺れる10年の間に凝縮した、人生の道のような物語だと思います。一度結婚を断った男性と再び結ばれるのもまた運命。紆余曲折ありますが、不思議と行き着く先は決まっているのかもしれませんね。恋愛を軸に据えながら描かれていく10年。その中の選択の一つ一つが運命につながっていくのだと思います。
2016/04/29
にいにい
久々の白石一文さん。白石さん作品は、小難しいんだよね。でも、それでも読んでしまう。こんな作風も好きなのかな?今回は、その白石作品の中でも読みやすい部類。女性総合職一期生の亜紀の29歳~40歳までの恋愛、結婚、出産、別離、仕事などが、当時の社会事情を絡め展開していく。「運命とは」「人生は選べるのか」「選ばなかった未来は」「仕事とは」という問いかけが、病気や事故、震災という突発的な事象とともに亜紀の周りの人々の人生も含め複雑に表される。白石さんの考え方も有かなとも思うが、読者は、別の考えも持てる。奥深い一冊。
2014/05/30
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