嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
米原万里さんが多感な少女時代の一時期を送ったプラハのソヴィエト学校時代の3人の同級生との想い出と、その後を語ったもの。スタイルからして、これはやはり一人称体の小説とすべきだろう。篇中では表題作が最もシニカルで苦みを伴う。それも、チャウシェスク体制のルーマニアを強く反映していたということなのだろう。一方、胸を打つのは「白いヤスミンカ」だ。こちらも故国を反映して、東欧の異端児、旧ユーゴスラビアの物語。パルチザンに身を投じてゆく父親のエピソードも感動的だし、ヤースナそのものが、まさにユーゴスラビアを語っている。
2014/12/30
のっち♬
ソビエト学校プラハ校での同窓生を30年の時を経て捜し出すドキュメンタリー。彼女たちはそれぞれ複雑な国家情勢や民族性を背負い、その狭間でイデオロギーに翻弄されつつも力強く理想と幸福を求めて生きていた。学校生活のませた会話にはじまり、彼女らの過酷な宿命を描く著者の深い洞察力と筆力にはかなりの説得力がある。「お金がすべて。ここには文化がない」共産主義の理想と現実、文化の違い、アイデンティティ、愛国心など扱われるテーマは多岐に渡るが理解しやすく冷静な筆致で書かれており、それらを乗り越えて結ばれる友情は感慨深い。
2017/05/17
遥かなる想い
プラハにあった「ソビエト学校」で出合った東欧の友達との数十年ぶりの邂逅の物語。チェコ・ルーマニア等、日本にいてはまず伝わってこない情勢はよくわかり、興味深い。かつて 20世紀の宗教とまで言われた社会主義は今 どうなったのか、日本における共産主義も含めて視野が広がる本である。
2010/04/29
absinthe
リッツァ、アーニャ、ヤスミンカ。少女時代を東欧で過ごした米原さんの、性格がまるで異なる3人の親友の話。少女時代と再会しに行った現代の話。暖かくて力強くて優しくて、個性ある3人。日本に住んでいると安全で当たり前の気もするが大統領が殺された国もあれば爆撃があった街もある。それでもみな逞しく生きている。外国を見下すことも麗賛することもなく、生き生きとした文体で書き綴る。いつまでも幸せに暮らしてほしいなぁ。遠くから見たご当地の印象とご当地に住む人と再会を喜び合う姿に感動。
2020/09/08
三代目 びあだいまおう
著者が子供の頃数年通ったプラハのソビエト学校で出会った個性溢れる友人たちとの思い出と、その後30年を隔ててそれら各国の友人たちを探しだしての再会の実体験記。瑞々しい筆致で紡がれる友人たちとの体験や会話がとにかく面白い❗アーニャの嘘の愛らしさと突然の激ギレ、リッツァの性語り、膨張する人体のある器官のくだり、等々笑える個性の面々。故国、民族思想、激動の歴史!空白の30年間で当然変わっていった友人たちの語る言葉。今も地球上のどこかで繰り返される民族紛争。青赤白に隠されたタイトルも絶品ですね‼️🙇お薦めです!
2019/02/15
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