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つきのふね (角川文庫)

つきのふね (角川文庫)

つきのふね (角川文庫)

作家
森絵都
国分 チエミ
出版社
角川書店
発売日
2005-11-25
ISBN
9784043791026
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つきのふね (角川文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

タイトルに魅かれて購入。月からやって来る船を思わせるような幻想性もあり、夢想を誘う実に魅力的なタイトルだ。こういうジャンルをヤング・アダルトというのだろうか。読み慣れないために、最初は文体に多少抵抗感がなくもない。途中から結末がおおよそ見えてくるのだが、さすがに想像通りという訳ではなかった。本来は異なった3つの事象を勝田くんと、さくらが繋げて行く構成はなかなかに巧み。そして、それらを統体として表現した結びの1文も効果的だ。中学生くらいを読者対象に想定しているのだろうが、私たちにも十分に訴求力はあるだろう。

2015/11/23

さてさて

なんて優しい登場人物達なんだろう、なんて優しい物語なんだろう、そして、なんて優しい世界観なんだろう。この作品には、大人達が歩んできた人生に眠る何かを呼び覚ます、そんな瞬間を感じさせてくれる物語があったように思います。『あたしはちゃんとした高校生になれるのかな。ちゃんとした大人になれるのかな』。将来に不安を抱く十五歳の今を生きるさくら、勝田、そして梨利。乱暴に扱うとすぐに壊れてしまいそうな中学生達の優しい心の内が描かれたこの作品。ひたむきに今を生きる主人公達の人生の貴さに心強く打たれた素晴らしい作品でした。

2022/10/05

zero1

尊い!みんな尊い!中学生のジタバタを、私は笑えない。「くだらん!」と思うのは大人だから。本人たちは真剣だ。さくらは裏切りで苦しんでいた。もちろん万引きはいけないことだけど、この時期の悩みを忘れたらYAの小説を読む資格はない。みんなを救う智の宇宙船、底が浅い勝田の行動。ノストラダムスに共鳴してしまう少年たち。散漫だが後の「みかづき」に通じる。解説は金原瑞人。「永遠の出口」の完成度と比べて本書には勢いがあると述べている。「DIVE!!」の原型がこの作品だとも。作家の辿った道を知るのは読書人の大きな楽しみ。

2019/02/06

菅原孝標女@ナイスありがとうございます

中学生さくらを主人公に、人間の危うさを描き出した作品。「人より壊れやすい心に生まれついた人間は、それでも生きていくだけの強さも同時に生まれもっている」嗚呼、確かにそうだ。私にとても沁みる言葉だ。こんなにもストンと胸に落ちてじわっと広がる。 森さんの作品は、人間の脆い部分をとても忠実に、隠さずに描いているからこそ共感できるなぁ。 タイトルが平仮名なのがとても素敵。

2018/03/31

中学生の心情がすごくきめ細やかに描かれ、それだけで瑞々しさを感じた。心病んでいく青年とのふれあい、裏切ってしまった親友への想い。放火事件や売春斡旋容疑など絡めつつも、1999年を目の前にしてノストラダムスの予言に振り回されたりする不安定さが根底にあって、そういえばあの頃ちょうど自分も彼らと同世代で似たような話をしていたなと懐かしくもあった。”人より壊れやすい心に生まれついた人間は、それでも生きていくだけの強さも同時に生まれもっている。”という言葉がとても印象的。後半の息をもつかせぬ展開は読後じわじわくる。

2014/03/11

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