やがてヒトに与えられた時が満ちて… (角川文庫 い 58-2)
やがてヒトに与えられた時が満ちて… (角川文庫 い 58-2) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
驚異の感覚を感じられる傑作SF。池澤さん独特の乾いた筆致が心地よい。人類の文明が終わってしまった後の宇宙のラグランジュ植民地が舞台。その植民地では人類の文明は停滞しているのだが、一人の男性が再び宇宙に向かって旅立つ。後半が特にすばらしくて過去のSFにオマージュを捧げながら、宇宙と生命に関する斬新なヴィジョンが描き出している。宇宙的なスケールでみたら、人間の存在はちっぽけなものだ。いずれは滅んでしまうのだろう。それでもこの小説が示しているように、種としての人間の想いはずっと誰かに受け継がれていくのだろうか。
2017/01/15
翔亀
小説畑の人の未来小説は、カズオ・イシグロ(私を離さないで)、大江健三郎(治療塔)はては未読だが三島由紀夫(美しい星)と色々あって興味深いのだが、池澤さんのはSFそのもの。SFファンだというし、初期作から宇宙への眼差しや科学的思考が垣間見られたので当然ともいえるが、やはりこの壮大だけど悲しい人類絶滅史SFには池澤さんの自然思想がよく表れている。それは"人類の自然から乖離"への告発だ。人類には自己制御の能力はなかった。「ヒトは巨大な脳に依って生きるという実験を試み敗退したのだ」(p158)。がその先がある。↓
2015/08/30
ステビア
イケザワ流SF。いい感じ。
2014/05/13
バーベナ
最後まで読んで、すぐに消化できず、また、最初から読んでみる。普段、感じないいろいろな感情が出てきて、自分の心を面白く感じた。遠い遠い、未来(過去)にあった話なのだろうか。湿っぽさはないのに、とても哀しい。視線を遠くにもつ訓練、たまには星をみて、悩みや迷いから離れよう。
2017/01/30
ゆき
物理学やら天文学やらの用語がポンポン出てきます。そういう意味で池澤さんらしい小説だと思います。SFっていうところも、ヴォネガットとかも影響してるんじゃないかな、と粗っぽい推測をしてみたり。個人的な話ですが、理系のはしくれの人間としては波長があうというか、与しやすいところはあると思いました。「一つの現象に注視し、次に数歩下がって現象が起こっている領域全体に視線を広げるという思考の性癖」は共感しました。もちろん、思弁的な内容が精査できたかどうかはまったく別の話です。
2009/08/10
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