ライオンの冬 (角川文庫)
ライオンの冬 (角川文庫) / 感想・レビュー
相田うえお
★★★☆☆22065【ライオンの冬(沢木 冬吾さん)k】町から離れた山の中に孫娘と2人で暮らす伊沢吾郎(明治43年生まれ)が主人公。彼は戦争中に山中を敗走していたところ、フィリピン人同士の内ゲバ事件に鉢合わせし、その流れ弾を右腕に受けたまま弾を摘出していない。関係人物はこの弾を得て旋条痕からどの銃から発射されたかの証拠としたいがためフィリピン陸軍東部方面隊所属情報部特殊作戦群に属する兵隊が伊沢吾郎の暮らす山に送り込まれてきた。当然、これを阻止したい者達も送り込まれ、この争いに吾郎達は巻き込まれていく。
2022/07/19
はつばあば
戦後70年とはいえ戦争の傷跡は今なお残る。敗戦国、日本を今の政治家は理解しているのだろうか。戦争に駆り立てたのは政府である。その始末もつけないで「わが軍は・・・」等とのたまう大臣。戦争を知らない世代、出兵を忌避できた財政界のおぼっちゃま達。戦争が好きな方達の御子息が一番に出兵の権利を与えられるならば、世のお偉方も平和を望んでくれるだろう。等と思わせる沢木さんの作品。二人の山じじぃの生き様・・愛する者を守る為に戦った姿。しっかり読ませて頂きました
2015/03/28
エンリケ
戦時中、徴兵された経験を持つ老人達の活躍を描くアクション小説。彼らのホームグランドである山中での戦闘シーンは迫力満点。敵味方共にシビアな経歴が描かれ、単純な勧善懲悪では済まされない内容。彼らは共に権力者達の愚劣な行為に翻弄された庶民なのだ。フィリピンの残留邦人が語られるが、歴史の授業で習った覚えが無い。これら重要な近代史に封印をするが如き姿勢には何かしら意図が有るのだろうか。主人公が命懸けで守るのは孫娘。その温かな交流がお話の底流を成し、殺伐さを緩和してくれた。初読みの作家さん。他の作品も是非読みたい。
2017/05/22
ねこまんま
登場人物が多いし、名前を二つ持っている人がいるし、誰と誰が闘ってるのかどんどんわからなくなってくるし、おまけに過去の人物との会話が挟まっちゃって、混乱しました。 特に前半は、なんでこんなことになったのか分からないまま話が進むので、しんどくて読み飛ばしてしまったのが悪かったのか・・・・ 最後にその理由が分かるんだろうなあ、と思いながらも、引き込まれるほどのキャラがなくてなんとか読み終えた、って感じです。 「約束の森」が良かっただけに残念。 もうちょっと他の作品も読んでみよう。
2016/02/19
伊之助
主人公達が戦争で負った癒しがたい心の傷という底流が、物語を堅固に支えている。戦争を生き残った老人二人が、一方の孫娘とともに奥深く不便な山に暮らす。老人の一方は戦地に散った仲間が果たせなかった帰郷の象徴として自分の故郷に居続けるため。一方はこの山を自分の死に場所にするため。孫娘は生意気盛りだが彼らのアイドルだ。彼らの神聖な山に侵入した悪意と戦うため、その悪意から少女を守るため、彼らは縄張りを守るライオンの如くトラの如く雄々しく立ち上がった。ーー方言がにくい。「じーちゃん?ひとりぼっちにしたら・・許さねがら」
2015/08/07
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