グラスホッパー (角川文庫)
グラスホッパー (角川文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
鈴木、鯨、蝉の三人の人物の視点から語られるという独特の手法をとるが、小説を統括するのは鈴木だ。小説の冒頭近くと末尾に、この物語の全体が鈴木の妄想である可能性を示唆してもいる。それは、この物語が善悪といった倫理規範を無視した暴力を描くことの、あるいは免罪符でもあるのだが。鯨、蝉、槿、鈴木の繰り出す暴力はそれぞれ質を異にする。もっとも鈴木のそれは極めて消極的であり、また彼は被害者でも加害者でもあるのだが。伊坂が理不尽なこの世に生まれ落ちた我々(作家自身も踏めて)に向ける視点は、明るいニヒリズムに他ならない。
2018/02/23
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️図書館本。前半の関連性が解らないうちは、余りに殺しが多くてちょっと食傷気味でした。中盤以降関連性が見えてくると俄然読み進めるペースが上がるお話でした。3人の殺し屋が群集相のバッタが恰も共食いをする様に収斂して行くことでようやく本書の題名設定に合点がいきました。面白いけどこの手の作品は時々読むのが僕には頃合いかなと思えました。
2015/03/05
せ~や
三人それぞれの視点で話が進んでいく。様々な専門家が現れてなかなか面白いけど、「押し屋」への持って行き方が、一人を除いてちょっと無理矢理な印象。ただ物語の中で、ほんの一行だけしか出てこない事を、後々しっかりと拾っていたり、伊坂さんの他の作品の事が物語の中に登場して、ちょっと感動しました。
2017/10/01
射手座の天使あきちゃん
暴力、殺人、詐欺、・・・あらゆる悪行と、「槿」ファミリーのハートフル?な雰囲気が同居した不思議な物語、後半の展開スピード感ありましたねぇ! 「増えすぎたバッタは・・・」 から、主人公の名前を日本一の名字にしたのかな!? <(^_^; 全国の鈴木さん、引き合いに出してゴメンナサイ! m(_ _)m
2011/05/26
hit4papa
亡き妻の復讐に執念を燃やす元教師と、三人の殺し屋が織りなす著者お得意(?)の群像劇。殺し屋たちはそれぞれに魅力的なんですが、物語のキーマン「押し屋」の正体が受入れられるかで本作品の評価が決まってしまいそう。映画向きの作品なんでしょうね。
2016/07/21
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