村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)
村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
いやあ、よかった。しみじみとそう思う。じんわりとしみ込んでゆくような種類の感動といえばいいだろうか。今回の文体は明治期の文豪風。あえて言うならば鷗外だろう。そして、小説構成のベースは『舞姫』。過ぎ去り失われた時間への追憶と憧憬だ。鸚鵡に始まり、年老いた鸚鵡に終わるのも見事。ディクスン婦人の手紙と、鸚鵡の「友よ」は泣ける。
2012/05/27
しんごろ
『家守綺譚』『冬虫夏草』でちょいちょい登場する土耳古(トルコ)に留学している村田のスピンオフ!?かな(^^)下宿先の日常生活の話で、たんたんと終わるかと思ったら、稲荷(キツネ)、サラマンドラ(火の竜)もでてきて…なるほどとなり、さらには高堂、綿貫も登場して、一気に引きこまれました(^-^)ディクソン夫人の手紙からの名もなき鸚鵡のシーンはウルッとしました。「ディスケ・ガウデーレ=楽しむことを学べ」いい言葉ですね!梨木作品は読むと、すぐに情景とかイメージが浮かぶ!そして眠りに導かれるのは俺だけか?(^^;)
2016/12/05
SJW
1899年、トルコのスタンブールに留学していた村田が、下宿の仲間と生活を楽しんだり、トルコの文化に驚いたりとトルコの下宿生活を楽しむ物語。「春になったら苺を摘みに」のトルコ判だが、最後は「家守綺譚」に繋がり作品が繋がったことが面白い。村田が最後にトルコでの思い出を懐かしむ件は切なくなり、考えさせられた。
2019/02/06
匠
舞台は1899年。トルコの首都イスタンブールに考古学の研究のため留学した村田の物語。国境や宗教を越えた現地でのかけがえのない友情エピソードには時折胸が熱くなった。そして、それでも大戦を迎えてしまう世界を苦々しく感じた。以前読んだ『家守綺譚』に登場する人物がリンクしているというので読んでみたのだが、古風な和の雰囲気である『家守~』の不思議世界はそのままに、こちらはトルコのエキゾチックなムードがとても良かった。「私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことなど1つもない」僕もこの言葉を覚えておきたい。
2014/09/17
まさにい
想像力をフルに使わないとイメージができない。何ていったって場所は東と西の文化の交流地トルコ。登場人物は宗教も違えば国も異なる。そして主人公は、古代の声に耳を傾けられる考古学者。時代は第一次世界大戦直前。世界地図と歴史年表を傍らに置き読む。読み終わってすぐに感想を書ける本ではない。もう少し自分のなかで、発酵・熟成させないと・・・・・。
2016/07/30
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