サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1)
サウスバウンド 上 (角川文庫 お 56-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
二郎のビルドゥングスロマンのようだ。中野というリージョナルな設定は効果的だろう。父親が革共同の伝説的な闘志であり、母親もまた「お茶の水のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた幻の女性というのは面白くはあるが、いささかやり過ぎの感も。なお、当時の呼称だと「ゲバルト・ローザ」だったのではと思うのだが、これはあくまでもフィクション。一方で小学6年生の悩みがなかなかリアル。子どもの世界も理不尽で生きにくいものだ。そのことがひしひしと伝わるがゆえに、痛快な面白さの中にも哀しみが忍び込む。それが本書のいいところか。
2018/07/23
みも
僕的に上巻は今一つ乗れない。例えば伊良部先生なら、真剣に悩む患者との対比、そこに絡む診療行為はある意味無害で、関わる人々を傷つけないから笑える。だが、本書の大人達はエゴイストばかり。父親は息子の思いより自分の思想に固執し、居候のアキラは犯罪に子供を巻き込み、母親は子供達の意向を汲み取ろうとせず、教諭達も自己保身に走る。時代錯誤と子供の世界との奇妙なアンバランスを、不可解な軽妙さで綴る筆致は、ユーモアよりも不愉快さが勝る。唯一の共感は、別れのシーンに描かれた小学生らしい淡白な友情。下巻へ…#ニコカド2020
2021/01/04
kaizen@名古屋de朝活読書会
喝上げ,脅かして金品を巻き上げること。小学校で起こっているであろうことを,現実味のある表現で記述している。小学生からもう何年も経過したであろう著者が,今起こっていることのように描写している。小学生の目線で。一転、大人の介入と大人の事情によって西表島に引っ越しすることになる主人公一家。あまりにも破天荒な展開。主要参考文献は主に大人側の記録。発見角川
2013/09/01
遥かなる想い
元過激派の父上原一郎の人物造形がとてもいい。小学6年の息子上原二郎の視点から書かれた本書は、学生運動という今や過去の話を現代の視点で描き出している。上巻は、東京から 沖縄に移る直前で終わる。
2010/06/20
Atsushi
元過激派(その世界では今もなお有名人)の父を持つ小学6年生の二郎。複雑な家庭環境や年上の中学生カツとの対立などいばらの道を歩むが、勇敢に立ち向かう姿はこどもながらあっぱれ。クラスメートの向井君や黒木君などのキャラクターも良かった。上巻は一家がひょんなことから西表島へ引っ越すところで終わるが下巻の展開が楽しみだ。
2018/07/19
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