サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)
サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
下巻に入って、俄然、父親の一郎が主役に躍り出る。彼の造形上の祖型は、八重山に伝わるアカハチ伝承にあるのだが、同時に作家のイメージ形成の背後には思想家の吉本隆明があったのではないか。一郎の体格や風貌にも、それを偲ばせるものがあるように思う。ここに描かれる西表島、あるいは八重山は理想化されているのはもちろんだが、それを差し引いても、アナーキーな一郎には日本の中では最も暮らしやすいところだっただろう。ユイマールの精神が、まさに支配や搾取の対極にあるからだ。
2018/07/24
みも
上巻の批判的感想は素直に撤回!上下巻読了後は流石と唸る展開。沖縄編こそ本旨であり、東京編はアンチテーゼとしてある程度のボリュームを必要としたのであろう。もう少しコンパクトであっても良かったとは思うが…。沖縄編中盤以降、東京編の不愉快さは著者の計略だと気づく。巧妙さの最たるは、類型を尖鋭化し「個」を際立たせた父親像に比して、平凡で常識的な小学生の息子を語り手にした作法。思いの外、政治色が強く思想的…とは言ってもイデオロギーではなく、プリミティブな捉え方での人間の在り様。反骨的で痛快な作品。#ニコカド2020
2021/01/05
遥かなる想い
型破りな父は沖縄西表島に移っても、破天荒のままで、母・姉・僕・妹は振り回され続けるが、結局みんな父のファンなのだ。読んでいると元気になる本。上巻と違って沖縄を舞台にして広がりがでてきている。
2010/06/20
Atsushi
西表島に引っ越して廃村の家に暮らし始めた上原一家。二郎は破天荒な父を煙たく感じるが、自然の中で逞しく自分を貫いて生きるその姿に尊敬の念を抱くようになる。固い絆に結ばれた家族に囲まれて、悩みながらも成長する少年の姿は爽やかで気持ちが良かった。青い海、白い砂浜、親切な島民たち。沖縄へ行ってみたくなった。
2018/07/21
nanasi
カバーデザインはフジモト・ヒデトさんと高柳雅人さんです。解説は収録されていません。個人的には二郎が黒木と一緒に家出をするシーンが一番好きです。下巻では一郎が少しかっこよく見えました。
2013/12/06
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