雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)
雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫) / 感想・レビュー
yoshida
幻想小説の作家さんとして、恒川光太郎さんは現在の屈指の存在だと思う。恒川光太郎さんの織り成す唯一無二の世界観。本作では「穏」という世界と、「雷季」に起こる様々な習わしが興味深い。そして伏線の回収が実に見事である。「穏」で生きる主人公の姉との別離、そして濡れ衣から「穏」から脱出する主人公と現代とのリンク。実に素晴らしい発想力と構想力だと思う。ホラーの括りにとらわれない素晴らしい作品。個人的に時間がなく一気読み出来なかった事が残念だった。再読すれば新たな発見がある筈だし、それだけの価値のある作品だと思うのだ。
2018/06/07
しんたろー
恒川さん「経験」2作目。デビュー2作目の初長編らしいが、独特の世界観は早くも確立されたように感じた…正に 恒川ワールドを経験した感。少年・賢也と少女・茜が、視点を変え、時空を交差しつつ、世俗から隔離された村「穏」と現代日本を行き来する物語…あらすじを上手く書けない程、オリジナリティ豊かなのダークファンタジー。単なる絵空事ではなくて、四季の移ろいや何処かでありそうな風習を織り込んでいるので、日本人にシックリくる文章なのが魅力。闇の権化・トバが恐ろしく描かれ、生と死の意味を問いかけてくる。余韻の残る佳作!
2017/09/11
おしゃべりメガネ
帯にもあったとおり、まさしく素晴らしい「ホラー・ファンタジー」でした。でも、悪い意味ではなく、‘ホラー’の要素はあまりいい意味であまり感じることができませんでした。というのも、あまりにも文章がキレイで流れがよく、章ごとに短めに区切られており、どんどん読み進めてしまいますから、ホラーというジャンルを忘れてしまうのです。オープニングから中盤までは怒涛の勢いでいくのですが、後半にさしかかるあたりから、少し流れがペースダウンしたような気がしました。欲を言えば物語そのもの自体を、もう少し楽しませてほしかったかなと。
2013/09/17
takaC
この世界観結構好きです。
2015/12/06
kariya
地図になくただ人には辿り着けない里「隠」(おん)では、来る日も雷の降る雷季には変事が起こる。この不思議な里で育った少年が、自らの秘密と謎と共にある事件に巻き込まれ、生死を賭けた冒険に至る。並行して語られる現実の街での怪異と物語の果てを追う内に、この”どこにもない場所”は、この世の”どこかにある場所”のように思えてくる。自分の住む街のどこかにも、トバムネキの裔や見えない風の鳥を胸に住まわせる人々が、そっと隠れ住んでいるのかも。そんなふうに心が自由に空を羽ばたく。風わいわいのように。
2010/02/27
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