もののはずみ (角川文庫 ほ 15-1)
もののはずみ (角川文庫 ほ 15-1) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
映写機、コーヒーミル、熊のぬいぐるみといった身の回りのこまごまとしたものに対する偏愛を語ったエッセイ集。ちまちました話になりそうだが、とんでもなく面白い。これまで読んだ堀江さんの本の中で一番面白いと言ってもいいぐらい。小説では抑えられているユーモアの要素が前に出ていて、思わずクスリとすることもあった。手帳、鉛筆、ナイフといったありふれたものの中にもドラマが詰まっていて、それを堀さんの鋭敏な感受性が掘り起こした感じ。人生の幸せはささやかなものの中にあることを、確信させてくれる本だった。
2014/11/21
コットン
新地学さんのオススメ本。力を抜いた作者と少し古いけれど生活の中に息づいていたガジェット達との関係が爽やかな笑いを誘う!「吸い殻入れと見まがう、うぐいす色の筒がスピーカーで古物市のおやじの言葉に乗せられ家にかついで持って帰った」や「娘が幼稚園に通っていた頃、特別な結び方を習ったとそこにあった鞄にチェック模様の熊を結んでくれた。世の中の常識からすると中年男が堂々と鞄にぶら下げていることは考えられないらしい。いったいなぜ鞄に熊なんか付けているんですか、熊がお好きなんですか、と何度もたずねられた。」等の面白話が…
2014/12/12
KAZOO
堀江さんの様々な「もの」についての随筆集です。文章はそれぞれ2ページくらいで写真が必ず付いています。私は特に文房具関連のところを興味を持って読みました。この中で紹介されている、ヘンリー・ペトロスキーという人が書いた「鉛筆と人間」という本を読みたくなりました。
2015/05/21
とりあえず…
「物心」と書いて「もののはずみ」。ふふっと笑みの漏れるような読み方だと思いませんか。「もの」の選び方、探し出した時の反応、付き合い方から著者のそこはかとない可愛らしさを感じてしまうのです。決して高価ではない「もの」達に愛情を傾ける様が、実に楽しそうで、この著者から生まれる小説たちを途端に読みたくなりました。
2015/01/08
chanvesa
先日の町田康さんの講演会で、堀江敏幸さんと対談した話が出て、あの方は書いている作品もおしゃれと言われていた。この本もいわゆる雑貨のエッセイだが、おしゃれであり、実用品でありながら、あたかもクラフト・エヴィング商會のような幻想性すら感じさせる。ブランドや実用性とは違う「物自体」への、もののイデアへのこだわりというのか。旧ソ連製の時計(166頁)は人肌で温めないと動かないなんていとおしい。鉛製の黒猫親子(130頁)はめちゃめちゃかわいいわけではないけどいとおしさを感じさせる風貌だ。
2016/12/11
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