乾山晩愁 (角川文庫 は 42-1)
乾山晩愁 (角川文庫 は 42-1) / 感想・レビュー
ツン
安土桃山〜江戸時代の芸術家たちの物語。狩野永徳しか知らなかったけど、他の人たちの作品が見たくなりました。永徳、探幽はいいかもしれないけど、その後の狩野派は美しいコピーを作り出す工房。アーティストにはとてもつとまらなかったでしょうね。
2022/06/05
chantal(シャンタール)
葉室麟さんのデビュー作。兄、尾形光琳の影に隠れるような存在感だった乾山を始め、狩野永徳、長谷川等伯、英一蝶と言った戦国から江戸時代の絵師たち。芸術で生きて行くためにはパトロンが必要であり、その時々の権威に取り入るための戦略を練ったりライバルを蹴落としたり・・うっとりするような作品とは裏腹に芸術家も大変なんだなあ・・絵師たちを取り巻く歴史ドラマも大変楽しく、また登場する名画を「どんな絵だったかな?」と思い出しながら読んだ。次に美術館などで彼らの作品を見る時はまた違った感慨があるかも。
2021/02/24
財布にジャック
デビュー作でもこの出来ですから、葉室さんがのちのち沢山の賞をとられるのも頷けます。絵師たちが主役の短編集ですが、どれも秀逸で甲乙付けがたいです。しいて一つ選ぶとしたら女絵師・清原雪信を描いた「雪信花匂」は特に印象に残りました。現代でも画家になるのは大変なことですが、それぞれの時代にあっても苦労が絶えない絵師の生き様が短い文章の中にうまく凝縮されていました。わがままを言わせてもらえるなら、それぞれの生涯を短編ではなくもっと長編で書いて欲しかったです。
2013/11/02
森の三時
「尾形乾山」「狩野永徳」「長谷川等伯」「清原雪信」「英一蝶」、5人の美の巨人たちを描いた短編連作。絵師も絵筆以外を用いた戦いの中にある。そうであったかもしれない『修羅』を想像すると作品が美しいだけではないものに見えてきます。光強きものは陰も濃きものでした。葉室先生のデビュー作とのこと。淡々と静かな感情表現なのに心情が伝わりました。
2021/02/20
reo
表題作「乾山晩秋」は天才絵師の兄光琳の背中を追ったが追いきれない弟乾山の物語。光琳の存命中、東山の養源院に赴き宗達の「松図」を観る。乾山は襖の雄渾な松に圧倒されたが、思わず口にした言葉は「松だけでは寂しいがな。雲や海が描いてあったら海か山かのわかるやろに」光琳は弟乾山の頭をぽかりと殴り「阿呆、何見とるんや。ここに描いてあるのは風景やない。思いっきり根をはって枝をのばした松は町衆や。町衆の力を松に託し描いてるのや」と兄光琳に教えられる。この作品以外の4作品も、まあ普通に地味。僕の教養不足は否めないな。
2018/05/09
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