宇宙のみなしご (角川文庫 も 16-8)
宇宙のみなしご (角川文庫 も 16-8) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
森絵都初期の児童文学作品。主人公たちが中学生なので、むしろティーンズ小説(実はこの定義をよく知らないのだが)と呼ぶべきか。本書は第33回野間児童文芸新人賞、第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞していることからも評価は十分に高い。ただ、それは大人の側からの評価なのではないかとも思う。ここに描かれる中学生たちは、あまりにも「いい子」ばかりである。クラス内に、いわゆるハブはあっても、イジメはない。主人公たちの逸脱にしても、夜中に子どもたちだけで徘徊し、よその家の屋根に登るというだけなのである。⇒
2021/02/28
さてさて
『新しい遊び、見つけちゃったかも』というリン。『その夜、わたしたちははじめて屋根にのぼった。すっかり屋根のぼりのとりこになっていた』と深夜の屋根のぼりという楽しみを見つけた二人の物語。それは、『星はわたしたちのために輝いている』という星空の下で繰り広げられる二人の物語。「宇宙のみなしご」という書名に読み終えると妙に納得感がわいてくるこの作品。そして、それと同時に少し物寂しさも襲ってくる不思議な読後感。なんとも言えないノスタルジック感、そして最後の数ページにものすごい魅力と説得力を感じた、そんな作品でした。
2021/10/01
machi☺︎︎゛
初読み作家さん。すごく透明感のある話で心が洗われた。中学生の4人が自分の居場所を求めて中学生らしい方法で見つけていく。大人にナイショのワクワク感や友達との難しい距離感、大人になって忘れていた感覚を思い出すことが出来た。「大人も子供もだれだって、1番しんどい時は1人で切り抜けるしかないんだ。」「僕たちはみんな宇宙のみなしごだから。ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなしごだから。」
2020/05/12
Willie the Wildcat
「屋根のぼり」という遊び。特に理由はないが子供の興味はつきない。小さいころやった”階段跳び”が脳裏に浮かんだ。子供心に、それをやることで何か自分の壁(たいていは少なからず大人になった気分だったと記憶)をこえたような気持ちになれる。共感とともに小さいころを思い出さざるを得なかった。”トタン”という意味では、私の場合、屋根ではなく”壁野球”の際に活用した自宅西側のトタンの壁が懐かしい。今はもうないんだよなぁ・・・。
2011/08/06
のっち♬
真夜中の屋根登りを秘密の遊びとする姉弟とそれに加わる仲間たちの物語。思春期の孤独感を平易な文体で鮮やかに浮き上がらせていく様や人物造形のバランスの良さ、ラストの屋根の上でテーマを明確に帰結させる洗練された構成などに著者の強みがよく出ている。「ときどき手をつなぎあえる友達」は「自分の力できらきら輝いてないと」見つからない。「心の休憩」は宇宙の暗闇に挑戦状を叩きつけることから得られるのだ。全ては頭と体の使い方次第。さらっとした質感だが、不安を打ち消す「ぬくもり」と「不屈の笑顔」に確かな力強さと優しさを感じた。
2021/03/20
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