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ぼくの手はきみのために (角川文庫 い 68-1)

ぼくの手はきみのために (角川文庫 い 68-1)

ぼくの手はきみのために (角川文庫 い 68-1)

作家
市川拓司
出版社
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日
2010-01-23
ISBN
9784043943128
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ぼくの手はきみのために (角川文庫 い 68-1) / 感想・レビュー

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えみ

まだ知らない優しさと愛おしさがこの3つの物語に収められていた。痛いくらい真っ直ぐで、目が眩むほどの純粋な「あなたが大切」という相手を想う気持ち。人としての欠落部分でさえ崇高に感じることができる。人を赦せる、自分を赦せる。そんな物語。「ぼくの手はきみのために」で静かな愛の執着を見て、「透明な軌道」で幽愁の祈りを知り、「黄昏の谷」で狂おしいほどの幸せに触れる。自分ではコントロールできない愛があることを噛み締めて、生きる意味を心身にゆっくり沁み込ませる…そんな心を揺さぶる言葉にならない空気を醸し出している一冊。

2023/12/01

紅香@本購入まであと9冊

夜になると灯る1500年前の明かり。時を刻み始めるオリオン座の砂時計。頭の上にぽっかりと気が遠くなるほど広大な住処。あまりにも広すぎて。美しいけれど切なく心細い。誰かの服の端っこを掴んでいたくなる。私達は宇宙の迷子みたいだ。手と手を繋ぎ合えたら。動かしがたい何かを感じたらそれは奇跡なんだと少しの間、優しい夢を見せてくれる3つの物語。。止まっているかのような時空。いっその事、飲み込まれたいと思う満天の夜空に。煩わしさから、変化から。上昇気流に乗って誰にも追い切れない。永遠に飛び続けたくなる二人だけの世界へ。

2014/05/21

えり

三つの短編集。タイトルから、こんな話かな〜?って想像してた感じが、そのまんまで拍子抜けしちゃった表題作。二作目「透明な軌道」は、「愛とは、生きて欲しいと強く願う心、愛する気持ちが自分自身を生かす」という思いは、わかる気がする。そして、どうも何処に焦点を合わせれば良いか最後まで戸惑ってしまった三作目「黄昏の谷」。。。どのお話も繊細で傷付き易くて不器用で、人付き合いが苦手な人々のピュアな恋愛物語でしたが・・・う〜ん。

2014/06/07

なないろ

何年かぶりに手に取ったのに黄昏の谷のラストシーンはずっと心に残っていました。不思議で美しい短編集。少し不器用な人たちの純粋な愛の物語。ささやかな幸せを心から幸せだと思えること、相手に生きていてほしいと願うこと、丁寧に描かれていて形のない愛が伝わってきます。お互いがお互いを必要として、たった一人を求める…シンプルな表題作が私はとても好きです。

2015/02/13

いずむ

この世界の住人は、誰もがどこか不完全で、不安定で。その弱さゆえに、誰かを想うというコトを知っていて、その愛する気持ちで繋がっているから、1人ではやがて倒れてしまうお互いを支えあっているのだ。それなのに、愛さえあれば生きられる、どこまでも透明な彼らの優しさが、どうしようもなく切ない。確かにお互いがお互いを想っているのに、なぜかどこかで、決定的にすれ違う。想うコトではなく、想い合うコトに愛の本質はあるのに。自分の弱さが、しかし誰かを支えているのに。ぼくの手はきみのために。そして、きみの手もまた、ぼくのために。

2012/10/16

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