神田川デイズ (角川文庫)
神田川デイズ (角川文庫) / 感想・レビュー
巨峰
大学生だった20代の頃、周りの大人たちから今が一番いい時期だろ?毎日楽しいやろうな?と言う意味のことを何度も言われたけど、そんなに楽しくもなかったし、いい時期とも思えなかった。確かに楽しそうにしている同世代は沢山いたのだが、なんだか僕との間に壁があった。向こう側にいけない自分。豊島ミホさんはこの小説でそんな情けない若い日々をリアルに描いた。その頃の僕は、本と映画だけがあった気がする。うん、そういう自分を肯定してあげればよかったと、今は思うんだ。この小説、好きだな。
2011/06/05
Lee Dragon
青春群像を書かせたらこの人が一番です。かく言う私も青雲の志を立てて大学に入ったはいいものの、まず友達がなかなか出来ない、コンプレックスを多く抱えた自分を、他人とは違う自分であることを信じ、ある種選民のような心持ちでいたことを思い出しました。 4年間は何もしないには長すぎるのに、何かを成すには短過ぎる、でも何かを求めて苦闘している様子が瑞々しい比喩を用いて表現されている。 あとがきや評論を含めても読んでよかったなと思わせる作品でした。 あー、大学1年からやり直したい笑
2016/07/26
まつこ
豊島ミホさん読了5作目。今度は大学生の青春。これまた痛くて、しょっぱくて。高校の時に憧れてた大学生には程遠く。他人を見て自分何やってきたんだろう。何も得てない。そう思って行動するも空回り。でも続けていくうちに見えてくるものもある。あれ?いつの間にか得たものが?なんて試行錯誤な大学時代。確かにしょっぱいけど、後から思うとあがいたりしながらキラキラしてたんじゃん!って思える。それを思い出しました。お笑いでも、左でも、恋愛でも、ピンク映画でも、小説でも。何かに向かおうとしてる姿は逞しい。
2014/08/06
dr2006
この作品凄く好き。もっと豊島さんのファンになった。大学を舞台とした連作短編。しかも「青春」を青春を謳歌することが出来ていないと思い悩む学生の側から描き切っている。冷えた心理描写に極彩色の比喩をあてるように見えて、もとからその表現がそこにあったかのようで暖かく自然だ。知り合いがだれも居ない大学に入学し、クラスやサークルやコンパ等大学特有の人間関係形成アイテムを使い、利害関係の一致で付き合う友人や静電気が間に走るような関係を築こうと奔走する。ペットボトルの中身がただぬるくなっていくような単調な日々を恐れる。
2017/02/16
lonesome
切ない。一話ごとに主人公が変わる連作短篇集で、それぞれの登場人物に豊島ミホの気持ちが投影されてるなと思いながら最後の話を読んで涙が出た。そしてどう感想を書こうか考えながらあとがきを読んだら答えが綴られていた。外見のコンプレックスだけじゃなく、人から選ばれたいけど選ばれないという根底にある後ろ向きな気持ちが自分と豊島ミホに共通するものだ。だけど物語の中でそれぞれに託された願望には希望が見える。この小説こそ自分は好きな人に読んでみてほしいと思う。
2014/02/18
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