米原万里ベストエッセイ (1) (角川文庫)
米原万里ベストエッセイ (1) (角川文庫) / 感想・レビュー
yumiko
没後10年に際し企画された文庫フェアの中の一冊。数多のエッセイから選りすぐりを集めた珠玉のベスト版。知性に溢れ感性豊かで、鋭い批評精神を持ちながらも大の下ネタ好きだった米原さん。大らかなお人柄が滲み出た数々のエッセイは、ロシア語通訳が本業であったにもかかわらず何度読んでもとんでもなく面白い。面白いと思うほどに二度と新作を読めないことが悲しく、悲しく思えばこそ何度でも大事に読み返したくなる。勢いを増して変わりゆく日本や世界の有り様を、彼女の言葉で今読みたい。
2016/07/15
yumiha
『アーニャ…』も『オリガ…』も満足しながら読めたので、エッセイにも手を伸ばしてしまった。本書では、ロシア語通訳時代の米原万里に会える。通訳としての苦労も、楽しいエピソードも、全く知らない世界なので興味深かった。笑ったのは、「ベルギー人のフランス語」は「日本語で言えば東北弁の響き」という箇所。思い浮かべたのは、ポアロ。楽しい。師匠と呼んでおられた徳永晴美氏の論文の書き方、チラリズムを取り入れた池の中の飛び石法も勉強になった。また在プラハ・ソビエト学校の最初の裁縫の授業が、下着のパンツの作り方だったのに驚く。
2022/01/31
南北
ベストエッセイだけに傑作揃いの内容である。ケストナーの「点子ちゃん」に出てくるトルコ蜜飴からハルヴァというお菓子へと広がっていく話もよかったが、最近のウクライナ情勢に関連して『戦争プロパガンダ10の法則』からの引用も共感できた。為政者が「われわれは戦争をしたくない」(第1法則)から「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」(第10法則)と主張するというのはロシアのプーチン閣下の言動と同じだと思い至り、感心するやら呆れるやらという感じで印象に残った。
2022/04/01
KEI
9歳〜14歳までプラハのソビエト学校で学んだ米原さんのエッセイ集。お元気だった頃にはTVでも見掛ける事が多く、若くして亡くなられた時には驚いた事を思い出します。ロシア語通訳として、翻訳家、小説家として幅広い知識に裏付けされているのは、本書でも伝わってきます。グローバルな視線での見解に頷く事しきりでした。それだけでなく食いしん坊であったり、ユーモアたっぷりのお茶目な面を知ることも出来て良い時間を過ごせました。特に印象的だったのは、アーサー・ポンソンビーの10の法則。しかと心に留めようと思います。
2017/08/06
アーちゃん
図書館本。米原万里さんを読むのは実に十年ぶり。当時「ガセネッタ・シモネッタ」を含むあちこちのエッセイを読んで、いわゆる「東側」から見た世界に驚き、ソ連~ロシアへの変革期に通訳として活躍した著者のこぼれ話に笑いました。今回、ベストエッセイとして再編集されたこの本を読み、米原さんの鋭い観察眼とユーモアに、改めてエッセイの名手であることを再確認した次第です。池澤夏樹さんの解説も一読の価値あり。
2018/12/24
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