太宰と安吾 (角川ソフィア文庫)
太宰と安吾 (角川ソフィア文庫) / 感想・レビュー
ケイ
二人について書く時の冴え渡る筆。「太宰に会いたい者は太宰の作品を読むがよい。私の幻影などは、もはや実の太宰となんの類似点も無いかも知れぬ」「もう白布の下に特徴のある太い眉宇が見られるだけで、よく笑い、よく語った、その人の口は動かなかった……一度、世界の物語で何が一番好きかと聞いてみたことがある。安吾は杯の手をやめて、即座に、〈パクパクと狼に食われてしまう赤ずきん…〉安吾の眼中の空漠を見るようなすさまじさで、私はだまってただうなずいただけだ」助けてやらねばならぬ不肖の弟と、見てられぬ不良の兄、であったか…。
2019/07/06
青蓮
檀一雄が語る、太宰治と坂口安吾の人なりや共に過ごした在りし日のエピソードを纏めた本。私にとって太宰は慣れ親しんだ作家ですが安吾はあまり読んだことがないので新鮮でした。安吾と比べると太宰は贅沢趣味のロマンチスト。安吾は虚飾を嫌う磊落放胆なリアリストと言う印象。その実彼は暗鬱厭人な面もあるけれど。2人は酒、女、薬に溺れながら身を賭して作品を書いた。文学を楽しむと言うよりは狂おしい程に迸る激情に駆られて書かざるを得なかったと言うように私には見える。言葉を武器に同じ時代を駆け抜けて行った彼等の足跡は今も色鮮やかだ
2018/06/11
鱒子
時代の寵児だった太宰治と坂口安吾。2人と親密だった檀一雄が、その二人の思い出を求められるままに書き散らした(本文ママ)文章を集めた本書。太宰は「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」の熱海置き去り事件が、安吾は川中島留置所事件とカンガルー服が、檀一雄にとって印象的なエピソードとして何度も繰り返されます。内容の重複が多いのは否めませんが、無頼派のデカダンここにあり!そして解説は吉本隆明。
2019/12/02
たぬ
☆4 あちこちの新聞や雑誌、舞台のパンフなんかに書いた文章をまとめたもの。太宰は「この世で信じられるのは味の素だけ」発言にぐっと来た。檀一雄を熱海に呼び出して自分は宿代も払わずトンズラ。クスリのためか175センチ近いのに50キロない。安吾はブタ箱から帰還直後に長男誕生の知らせを受領。どでかい胸ポッケをつけた「安吾服」を発明してドヤ顔。ライスカレーを100人前出前。どちらも人間味ありますね。
2021/04/06
冬見
二人の異様な魂との交歓。檀一雄が太宰治と坂口安吾について書いた文章を集めたもの。よって内容(ものによっては文章丸々)の重複が多い。鬱気の波がやってくると太宰はめそめそし、安吾は暴れ出すらしい。檀と安吾の信州旅行のエピソードはなかなか強烈。太宰と安吾の人間的な魅力もあっただろうけど、それにしても檀先生、とてつもなく懐が深い。引き摺られることなく、同化することなく、"自分"であり続ける気骨があったのだろう。ふと「太宰と安吾には檀一雄がいたが、檀一雄には檀一雄がいなかった。」という言葉を思い出した。
2018/06/01
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