古典基礎語の世界 源氏物語のもののあはれ (角川ソフィア文庫)
古典基礎語の世界 源氏物語のもののあはれ (角川ソフィア文庫) / 感想・レビュー
内藤銀ねず
今年(2023年)は、日頃からそうしたいと思って止まなかった『源氏物語を原文で読む』を実行したいと思います。そう思ったのは大野晋さんのこの名著を読んでしまったからで、この本を読んでいるのといないのとでは、源氏物語の理解がまるで違うと断言いたします。よく源氏物語は「もののあはれ(本居宣長)」と言われますが、では実際に「モノ」が付く単語をどう現代語訳するのか、とことんまで突き詰めて紹介しています。例として「ものちかし」と「ちかし」、「ものおもひ」と「おもひ」の違いなどなど。とにかくモノすごい本でした。
2023/01/02
紫草
何となく流れでわかった気がしていた単語1つをつきつめて、その語の意味を考える。学者つてすごいなあと思う。「何となく」では掴みきれていなかった言葉の意味をわかった上で読むと、文章がまた違ってくる。源氏物語を原文で読みたい気持ちがまた強くなりました。
2019/09/11
maekoo
古典で多く出ている「もの」と言う言葉、ものいひ・ものおもひ・もの寂し・ものものし・もののあはれ等々を我々は深く読んで源氏物語を読んでいるのでしょうか? 日本語学者の著者がこの「モノ」と言う言葉の多様性と文脈による表現の違いや深さ・広さを論じています 物そのものを表す場合や決まりや行事、季節、怨霊、存在、運命までも表現していることが他の様々な古典文学の原文文章をも引用して解説してくれています 原文の言葉の意味が一つ理解できれば面白さが深まると良く言われますがやはり真に楽しむのは原文だと改めて感じた著書です
2020/07/06
紫暗
「源氏物語」を主な資料としてその表現を引き合いに出しながら「モノ」が付いた言葉について一つ一つ丁寧に検証しています。古語全般について書いてあるわけではないのでそこはご注意を。「もののあはれ」など、今まで何気なく耳にしてきた言葉が、そもそもどのような言葉なのかが説明されています。現代では見落としがちな繊細な古典の中の言葉達に美しさを感じる一冊でした。
2014/11/13
あ
古典文学の味解にあたって、失われた古語のもつ奥行きを探求することの大切さを痛感。基礎的な接頭辞を精査することで、当時の社会に底流する価値観や、かつての人々が携えていた感性が生き生きと蘇ることを、「もの」という語を例に実証してみせる。基本的な言葉であればあるほど、それは世に遍く散らばり、言葉の世界に生きる人々の多様な実相を映し出す鏡となる。そして古典の中に閉ざされ遺されたその鏡は、千年の時を経てなお当時の面影を映し続けている。我々はその鏡面を一つ一つ丁寧に磨くことで、遥かな世の断片を覗くことができるのだ。
2023/11/03
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