死なないでいる理由 (角川ソフィア文庫 L 109-2)
死なないでいる理由 (角川ソフィア文庫 L 109-2) / 感想・レビュー
かふ
定期的に精神安定剤として、鷲田清一は読んでいる気がする。前半は構造主義的な哲学的存在論のような。後半は、近年の生と死をめぐるエッセイ。AI問題や大人にならずに老いていく学生たち。通過儀礼としての成人式が学校という閉鎖空間の中で社会から隔離されている。だから、大学を卒業するとけっこう歳を取ってしまうのだが自活能力はない。若者の自立問題と自活できない社会的状況。以下、https://note.com/aoyadokari/n/nf939470efa66
2021/12/19
テツ
「生きる理由」と「死なない理由」って似ているようだけれどみんなきっと微妙に異なるんだろうな。どんな人間でも必ず死ぬ。今この瞬間どんなに幸福だろうが不孝だろうが平等に必ず死ぬ。いつか死んでしまうのなら今死んだとしても別に構わない筈なのに何故ぼくは(あなたは)死ぬことなく生を継続しているのか。個人個人の価値観や人生観、周囲との関係性などで理由は違うだろうけれど、今日生きて明日も死ぬ予定がないのなら無意識にでもぼくたちは人生を諦めていない。それを思い出せば少しは明日の景色も変わるかもな。死なない限り人生は続く。
2024/04/03
紫羊
聖書やチャトウィンにどっぷりだったせいか、滋味深い日本語が心に染みる。死なないでいる理由に答えはみつからなかったが、生きることがいっそう愛おしく感じられた。
2022/10/11
mukimi
面白くてずんずん読めた。「幸福論は不幸の忘却であってはならないし、ありえもしない。」「ハウツー本は幸福を夢想することに足りているから退屈なのである。」私は底無しに明るいハウツー本を読んで明日も頑張ろうと思うタイプだが自分の不幸に関する屈折した諦めが明日への意欲になることもある。死、老い、ケアについて、日々の雑務に忘れ去りたくない考えを文章の中にたくさん見つけた。付箋だらけになった。あと二周くらい読みたい。次は能動的に考えながら。
2014/11/27
Gatsby
子供の頃から、「人間、どうせ死ぬのになんで生まれてきたんやろう?」と考えることがよくあった。鷲田氏の他の本で、「死ぬと分かっていて、なぜ人間は生きてゆけるのか、そういう根源的な問いに答えを出していくのが文学部というところだ」という大宅映子氏の言葉が引かれていた。文学部で学んだ私には明確な答えを出せたように思えないが、<わたし>は「他者の他者」としてある、ということばと、インターディペンデンスということばに、その答えを見いだせそうだ。扱うテーマは難解であるが、その内容は理解しやすい本である。
2012/07/15
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