新訂 妖怪談義 (角川ソフィア文庫)
新訂 妖怪談義 (角川ソフィア文庫) / 感想・レビュー
HANA
柳田国男の妖怪に関する論文というより随筆集と言ったほうがしっくりくるような一冊。一編一編が短くテーマを絞って書いているせいか、いつもの眉間に皺を寄せている様な内容ではなく好きな事を好きなように語っている様な内容で、こちらも読んでいて穏やかなような懐かしいような気分にさせられた。内容も河童や山人、一つ目小僧に天狗に日暮れ時とこちらのノスタルジアを掻き立てるものばかり。後年の柳田民俗学がこういう物を切り捨てなければどうなっていたんだろう。それにしても「妖怪名彙」の注釈、微に入り細に入りその詳しさに圧倒される。
2013/09/12
テツ
柳田國男による妖怪についての論文。こどもの頃に祖母から冬休みに買って貰った水木しげるの妖怪辞典を読んでから今に至るまで妖怪とか怪異とかその手の話が大好きで仕方がない。怪異譚そのものではなく怪異の成り立ち。妖怪の分布と変容。彼らのルーツとは何か。河童や天狗。日本人なら誰もが知る大物メジャー妖怪でも(だからこそか?)そのルーツはとてつもなく広く深い。面白い。ただ生きる上において全く役に立たない知識なので読む人間を選ぶよな。大人になってもこの手の話が大好きな方には是非一度チャレンジして頂きたい。
2017/01/03
春風
柳田國男の唯一の妖怪論文集『妖怪談義』。刊行は1956年だが、収録される論文・エッセイは戦前発表のものをそのまま編んだものとなっている。妖怪研究の必読本である本書だが、校閲作業を行わなかったためか、省略・誤記・誤解が多くある。そのため本書では文化人類学・民俗学者である小松和彦氏が校注を行い、省略・誤記・誤解と思われる箇所を指摘し、難解であった『妖怪談義』に再び命を吹き込んでいる。また本書収録の妖怪名彙には、ゲゲゲの鬼太郎でお馴染みの妖怪がずらりと並んでいる。この書無くして、鬼太郎も生まれなかっただろう。
2020/10/04
nata
他の方も書かれているが、私も子供の頃水木しげるの『妖怪事典』という横長の版で見開きの左が画、右が文の本を読んでいたのを思い出した。そこに描かれた妖怪にはこの本に出てくる名前も多く、柳田は妖怪論にも大きな影響を与えたようだが、その方法は結構雑だったらしいことが解説で指摘されている。実際読んでもそういう印象で、強引に感じるところも少なくない。ただ当時としてこういう角度で真面目に妖怪を捉えようとした姿勢に功績があるのかもしれない。
2021/04/24
Yuusi Adachi
妖怪とは何か。河童・天狗の論考、妖怪の名前を集めた“妖怪名彙”―。日本各地を歩き見聞した怪異伝承を編纂し、妖怪という文化現象から日本人の心を明らかにしようとした妖怪研究の決定版…と言われてますが、柳田の方法論は牽強付会である。本書では「一つ目小僧」。児童の片目を潰す。その児童は田畑を荒らしてもいいし、何をしても許される。なぜなら、一つ目小僧は恐慌や、自然災害に見舞われたときのための生贄だというのだ。谷川健一はタタラバの製鉄で失明したというが、どっちが正しいかとなると谷川説の方が説得力がある。✩✩✩★
2013/09/12
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