江戸の妖怪革命 (角川ソフィア文庫)
江戸の妖怪革命 (角川ソフィア文庫) / 感想・レビュー
HANA
江戸と明治・大正において人々の妖怪への受容が如何に変化していったかを論じている。江戸においては妖怪が「表象」として博物学的分析の対象となっていったのに対し、明治では幽霊だけが「私」の内なる闇としてクローズアップされたとしている。開化開化といいながら幽霊を神経のせいとして自我と絡み合わせていく明治・大正より、妖怪を手品のタネにしたり分類し様々な考察を加えていく江戸の方がなにやら明るく楽しい気がするのは何故だろうか。読みながら自然現象の仕業として他をふるい落とした結果、豊かなものを失っているような気がした。
2013/07/11
シャル
妖怪がいかにして、恐怖と不思議の存在から愛すべきキャラクターへと変容していったのかを分析した一冊。それはまさに、妖怪という存在にとっては革命ともいえるものだろう。特に興味深かったのは妖怪と幽霊の比較で、科学の発達により自然現象が解明され、認識、具現化されたことで妖怪が恐怖の座から転がり落ちていったのに対し、現代に残されたもっとも深遠で非合理な謎である『私』の象徴である幽霊は、霊感の助けも得て自己完結の恐怖となり、さらに不気味な存在となっていったというのは実に納得がいく。さて、これからの妖怪はどうなるのか。
2013/07/01
hatohebi
近世の妖怪ブーム分析にフーコー『言葉と物』のアイデアを持ってきた点が本書のポイント。かつては妖怪の出現が凶兆を意味するなど「記号」としての働きを持っていたが、近世になり本来の意味作用を失い、その形態に注目され、自由に組み合わされ消費される「表象」となった。その背景となった妖怪イメージの様々な流通形態を、図鑑・手品・見世物・玩具など具体的に取り挙げ分析する。さらに近代では催眠術や神経など「人間」の知覚認識能力と結びつけて妖怪が論じられるようになった。
2021/04/26
犬養三千代
再読。読む本が無かったので。 鳥山石燕の百鬼夜行絵巻からの妖怪ブームとその変遷。 「ある」ようで「ない」と京極夏彦さんがよく表現しておられる。まさにその通りだと思う。人間は科学的であろうとしながらも割りきれない想いを抱く、その隙間に妖怪は存在してきてのだろう。 昨今の妖怪は消費される ゆるキャラにしたのは水木サンだがその源は石燕。
2017/11/21
みーすけ
本作を読み進める間に妖怪展をはしごしたので、紹介されているものを幾つか目にすることが出来たのは幸運だった。
2013/08/27
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