陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫)
陰翳礼讃 (角川ソフィア文庫) / 感想・レビュー
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
陰翳に対しおそれとともに美を感じ、敬意を払ってきた日本古来からの美学を世にも美しい文章で語る随筆集。どの時代も新しいものの便利さに喜びを感じながらもそれによって失われた親しみのある不便さを惜しんでぶつくさ言うのは変わらないんだなぁ。 真面目くさった文章で真剣に猫のしっぽについて「ああいう便利なものがあったならば」と思いを語り、ハリウッド写真の「あの白い汚れ目のない歯列を見ると、何となく西洋便所のタイル張りの床を思い出すのである」なぞと嘯く。思わずくすり。谷崎氏のイメージががらっと変わった本でした。
2018/05/28
優希
日本文化を問い直す随筆集ですが、憂いていることは時代が変わっても普遍なのだなと思わされました。日本の美、そこにほの暗さのある美しさを愛した人はどれだけいるでしょうか。美に対する執着心を強く感じました。
2016/02/24
k5
安易に日本文化を考えるシリーズ第二弾。断然、『茶の本』よりも刺激的でした。西欧が明るくて日本が陰だなんてそんな単純なもんじゃねえぞ、という井上章一の解説は、まさにその通りなんですが、それが野暮に聞こえるくらい説得力のある本です。『茶の本』もおそらく同じことを言っているのですが、理論の援用がなしに作家の感覚だけで話してくれる方が説得力があります。そのほかに収められているエッセイも名篇。
2023/01/04
ヒロミ
インテリアデザイナーにも読まれている名著。日本人が好む美しさとは、省略の美であるということ。空白を持って画面を構成する日本画もそうであるし、無駄な言葉や描写のない小津安二郎、北野武の映画も実に日本的な美と言える。宮崎駿さんが「アニメーションは三歩あるいて十歩あるいたように見せなければ意味がない」というような主旨のことを何処かて語っておられたが、それも日本の美なんだなあと強く思った。また、世界で評価されているのはまさにそれら省略の美そのものなのだ。
2021/09/10
ひよピパパ
日本文化の真髄に迫る珠玉のエッセイ集。陰翳による日本建築の美を説いた表題作他7作品を収録する。その「陰翳」の美が、建築のみならず日本語の表現にもあらわれていて、「日本的なる風雅の精神」がそこから発している(「現代口語文の欠点について」)とは、面白い指摘だ。全体的に読みやすく、読みながらジーンとくるものがある。
2024/10/21
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