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末枯れの花守り (角川文庫 す 12-1)

末枯れの花守り (角川文庫 す 12-1)

末枯れの花守り (角川文庫 す 12-1)

作家
菅浩江
智内 兄助
出版社
KADOKAWA
発売日
2002-03-23
ISBN
9784044120078
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末枯れの花守り (角川文庫 す 12-1) / 感想・レビュー

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カナン

寂として我が身のすぐ傍に或る異界から、現世へとしなやかに伸び咲き綻ぶ花の傲然とした美しさ。人の心を花に変え蒐集したがる艶やかな姉妹と、それを阻止する謎多き花守りの青年。夜明けに目覚める朝顔、夕映えの赫奕たる曼珠沙華、雪中の寒牡丹、色風に揺れる山百合、神木の松に寄り添う梅。生者必滅、花は咲いて畢ることが必定。それ以上を望み希ってはならない。何故ならば花は人の心を容易く奪えてしまうから。姫君達のお召し物、歌舞伎に和歌。目が眩むほど絢爛豪華で、咽返るような花気に包まれた心地になる私の胸に咲く花は果たして何色か。

2017/04/30

井月 奎(いづき けい)

鏡の如き泉にうつる花はどれも夢幻か。花が願わず咲くこと、それは徒花。花は命の限りを尽くし咲くのであるから人は酔い蝶は舞う。酔狂な美姫は邪に逆しまに美を愛でる。妙なる香りも重なり濁れば咽るばかり。主人の花を守れなかった者たちはとこしえに身を焼き心を砕くが安寧は訪れずに、花追い旅を行脚する。主従の隠した涙こそ花そのもの。主従が思う心こそ花そのもの。刹那に咲く朝顔、地下でつながる曼珠沙華、百花の王牡丹、風に揺れる百合も咲き、また枯れてこそ、心の中で永遠の安らぎを得る。人もまたそうなのだ。

2016/05/22

かとめくん

登場人物たちが抱える望みや願いを、「花」に変えることで永遠化し、そこに至る不安や欲望を消し去ろう、と人を誘惑するあやかしの姫たち。それに対し自らの力で解決しなければ単なるあやかしのコレクションに過ぎないと諭す花守り。絢爛な容姿に惑わされ、揺れる者たち。あやかしたちの来歴などの説明がないので、読者の想像力で補完していく。妖魔も葛藤しているけど、もう少し人の葛藤に重点を置いたほうがおもしろかったかなあ。

2022/11/24

好きな世界でした。時代がかった豪奢だけど、闇の暗さもあって…1作だけしかないっぽいのが寂しいです。花守り側の時実や十郎・五郎に日照間様も、女性を花にする側の永世・常世姉妹もキャラ立ちしてて素敵でした。姉妹、毎度毎度衣装も屋敷も調度品も素敵。おかっぱは禿。女性の闇を捕らえて誘惑する姉妹も、最終話のフサさんの召し物褒めにはタジタジになってて婆様強かったです。朝顔のお話も好きでした。時が流れているなら、闇は続かない。そうだといいです。牡丹、独り咲きにも気概が必要。

2022/02/12

びっぐすとん

108円本。表紙の絵がなんだかおじさんが好きなエロ小説みたいだな、と思ったが、内容は菅さんらしい美しくも妖しい世界。『メルサスの少年』が若年層向きのファンタジーならこれは間違いなく大人のファンタジー。花に想いを掛け過ぎたことで美しい姫君たちに永遠のコレクションにされてしまう人々を助ける日照間とその臣下たち。どうも時実や姫君たちがどういう存在なのかわからないし、日照間の妻・朧に何があったのかがハッキリしないので最後まで読んでもスッキリしなかったが、帯にある「泉鏡花だ!」ってのはわかる気がする。

2017/08/26

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