定本 物語消費論 (角川文庫 お 39-2)
定本 物語消費論 (角川文庫 お 39-2) / 感想・レビュー
harass
1989年の本に補講をつけた文庫(2001)。著者の物語消費論を参考にした東浩紀は、データベース消費論を生み出すことになる。ビックリマンチョコなどを例に、設定やドラマの断片を見せ、ユーザーにその背後の物語を想像させるスタイルの作品を解説。80年代当時の文化の事象を考察していく。正直、古く感じるのだが、今から見ると常識に思える部分がある。またあとがきに著者が絶版予定のこの本を再販した理由がある。80年代はまだ続いているという確信があるという。準古典、資料として。
2018/10/07
へくとぱすかる
原著は1989年。復刻版のこの文庫が2001年。今はさらにそれから15年も経っている。というのが信じられないほどである。何だかんだ言って、この社会は現在も80年代を引きずっているように見える。「噂」についても、インターネットのおかげで、より浸透していると思えるし。それにしても「物語」というキーワードを媒介にして結びつく、宗教とビックリマンとの類似に対する指摘は衝撃。
2016/11/21
ころこ
いわゆるサーガ論で、著者は『スターウォーズ』をよく例に出す。ゲームマスターが〈物語世界〉の枠組みを作って、個々の作品は別の作家が作成する。ゲームマスターからみれば、別の作家は物語の消費者だ。二次創作やデータベース消費、スピンアウトものなど、現在では当然のように行われていて、当時は無限にあるようにみえた物語論の参照枠をつくった。本書はビックリマンによる説明を前面に出している。シールがおまけに付いているチョコレートの製品を、子供たちがおまけのシールの方に熱狂してチョコレートを食べないで捨ててしまう否定的に報道
2023/03/27
ヤギ郎
東浩紀以前のサブカルチャー論。著者のあとがきから,本書で紹介された議論は「古い」ものであるけれども,その再構築により,現代にも通用する議論となる。著者よりはるか後に生まれた世代として,80年代・90年代の言説に触れることのできるよい資料である。著者の目を通じてみる「天皇論」は興味深い。社会が成熟し,新たなコンテンツが誕生した現代社会において,私たちの消費行動を見つめ直す一冊になるといえよう。
2019/04/22
みのくま
「物語消費」とは作品の物語=世界観=設定を使い、消費者自らストーリーを再構築する事だ。本書は「ビックリマン」や「同人誌」を例として紹介しており、文壇論壇が発見し得ないサブカルチャーを武器に説得的に批評を組み立てている。80年代後半に書かれた本書だが、現代でも色褪せることなく首肯できる内容だ。また、補論・都市伝説も面白かった。都市伝説(=世間話)とは、近代社会以降抑圧された「異界」の噴出に他ならない。「異界」とは非日常の世界だが、日常を日常たらしめる重要な要素でもある。我々は異界から死の匂いを嗅ぎとるのだ。
2019/01/07
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