少女たちの「かわいい」天皇: サブカルチャー天皇論 (角川文庫 お 39-8)
少女たちの「かわいい」天皇: サブカルチャー天皇論 (角川文庫 お 39-8) / 感想・レビュー
しゅん
大塚の天皇論の変遷が見える。「天皇がいないと仕方ない」から、「天皇に寄りかかってはいけない」といったところか。ディズニーランドと三島由紀夫にポストモダンな共通性を見出す論はとてもおもしろい。ただ、このフェイクの美学が全面化するという枠組みを全て受け止めると、語りにくくなることも多くなる感じはしてて、あくまで面白く再構成されたイメージとして楽しく受け止めたいと思った。
2019/04/12
なっぢ@断捨離実行中
まず著者は病に臥せる昭和天皇を「かわいい」と形容した少女からサブカルチャー化した天皇を論じるところからはじめる。続いて本書のハイライトである三島由紀夫論と石原慎太郎論では、三島のポスト・モダン性と石原のプレ・モダン性を指摘し、最後には天皇を断念した「天皇抜きのナショナリズム」を主張する。ポスト・モダンでもプレ・モダンでもないモダン(=成熟した大人)を志向する著者の意見はもっともだが、成熟のかけらもない幼稚な大人が跋扈する(永田町や霞ヶ関を見よ!)この現代日本においてどれほど有効性がある話か甚だ疑問だ。
2015/10/20
晴間あお
自分には書いてある事の是非を判断する知識もないので恐る恐る読んだ。天皇に関してはよくわからない。でもそれこそ歴史的な意味も知らず「かわいい」と言った少女たちと通じる部分なのかもしれない。オタク界隈にも歴史的な意味から切り離した作品がけっこうある。「艦コレ」や「ガルパン」なんか考えようによっては恐ろしい事をしているけど、現実とは一切関係ないからオッケーとなる。しかしそれで済むのか。おかげでおもしろい作品が生まれたし、自分も楽しんでいるけれど、一種の疾しさのようなものは持っておいたほうがいいと思っている。
2018/06/14
ぼっせぃー
ちょっと古い評論ではあるんだけど、ぷちナショナリズムの話もオウムの話も、2012年の日常にリアルな構造として見てとれるので面白く読める。秀逸なのはやはり三島由紀夫論で、ディズニーランドと三島由紀夫が消費社会というテーマを通じてこう繋がってくるのかという面白さがある。というか、このふたつが同時代に存在したと知るだけでも、結構な驚きではあるんだけど。ついでに、サブカルチャー化の弊害、危険さについての言及に関してでもこの頃はまだこう、コトが進む前とあって、熱があるというか、焦りが感じられるなー。
2012/12/30
@かおり
89年から03年までの評論集。昭和天皇崩御から白装束事件までに歴史の流れを感じる。天皇制から見たナショナリズム・日本の在り方を論じる。天皇は最早サブカルチャーであり、また天皇が形骸化しているという指摘には唸らされた。また、三島由紀夫論も面白かった。なかなか難しかったのだけれど、評論集であるから筆者の価値判断・意見が何度も出てきたので辛うじて理解できた。引用や鉤括弧が多用されているから読みづらいと感じたのかもしれない。
2012/09/16
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