戦略拠点32098楽園 (角川スニーカー文庫 153-1)
戦略拠点32098楽園 (角川スニーカー文庫 153-1) / 感想・レビュー
あなほりふくろう
せんせデビュー作。後の長谷敏司のエッセンスがしっかり詰まった作品でした。マリアの口調が後のメイゼルを思わせるとかそれ以上に印象的だったのが、マダルバ、ヴァロアの人間性にクローズアップした点でしょうか。ヴァロアのそれを誤差と突き放そうとしたマダルバが逆に自らの弱さに気付かされ狼狽する、でもそれこそが忘れていた彼の人間性に他ならない。「必要とされなくても、私はここにいたい」すべて剥ぎ取られて発したマダルバの、むき出しの人間らしさ。抒情的ながらも伝えたいことは真っすぐ伝わってくる、そんな作品でした。
2014/05/21
ひなた*ぼっこ
初読み作家。機械仕掛けの青年と無垢な少女の物語。「『自分』という概念は、社会を構成する人間個々が持ち寄る、ただの『誤差』に過ぎない」ならば生きる意味とは何か。人工子宮から産まれ、強くなりたくて軍に入り、戦うために体のほとんどを機械にした。それで得られたものはなんだったんだろうか。機械の目は涙を流せないから笑った、ていう描写のやるせなさがとても好き。
2019/06/15
白義
物語の背景には、遠い宇宙で起きた長きにわたる星間戦争がある。そしてその星間戦争におけるある戦略拠点惑星を巡る激戦が空では巻き起こっていて、その戦略拠点にはあまりにも皮肉で残酷な真実が隠されている。が、それらは全て「背景」であってドラマそのものではない。本書で描かれるのはその惑星で描かれる、兵士と少女、たった三人のささやかで透き通った日常の日々であり、どんな戦争、人間性への眼差しもそのささやかな日常の中から逆照射されている。あまりに美しく叙情的でクリアな感傷の中に著者は世界の広がりそのものを込めて見せたのだ
2018/10/19
あさひ
話はシンプルなものだが、最後の夏休みみたいなノスタルジーさを、感じた。
2016/06/05
マリオネット・ブックマーク
『あなたのための物語』や『BEATLESS』でSF界から脚光を浴びた長谷敏司氏のデビュー作。短いながらも、生と死を、戦争を、愛を、友情を、そして幼女を(笑)、冷徹なまでに突き付け考えさせる作風は、すでにこの時から確立されていた。デビュー作ゆえのつたなさというのも感じられるが(視点の切り替え方や登場するSF的ギミックなど)、充分に許容範囲。むしろ新人時点でここまで書ける力を素直に尊敬できる。あとがきも必見。作家としての長谷敏司氏があえて捨てずにいるわだかまりが、彼の作風の原点になっているように、僕は感じる。
2014/03/28
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