悲劇の9日女王 ジェーン・グレイ
悲劇の9日女王 ジェーン・グレイ / 感想・レビュー
ケイ
ヘンリー八世が何度も結婚したことによる歪みの犠牲者の一人。後継ぎに、健康な男の子供を得る難しさ。そして皇位継承の順位を決める根拠の曖昧さ。そのあたりの入り組んだ人間関係が整理しやすく描かれている。ヘンリー八世晩年からの権力争いにつながる後継者選び。権力を掌握しようとした者達が、それをしきれず、次々と断頭台に消えていく。それを作者独特の世界観で表しているのだが、ジェーンの心持ちの表現等、芝居かかりすぎていて、それが残念。
2019/02/28
future4227
ヘンリー8世⇒エドワード6世⇒ジェーン・グレイ⇒メアリ1世⇒エリザベス1世。わずか数年で目まぐるしく王位が変わるイングランド。ヘンリー8世の鬼畜ぶりが凄まじい。再婚の度に前妻を断頭台送りにする暴君。そんな中、愛する人との結婚も叶わず、本人の意思に反して女王に担ぎ上げられたジェーン。なんと即位9日にして王座失脚。彼女に即位を説得した連中は形勢不利となるや手のひらを返して裏切り保身に走る。なんと両親までも!最後まで高潔だったのは16歳にして断頭台に立つ幼いジェーンただ一人。最後の処刑シーンは何ともやるせない。
2019/05/25
miya
エリザベスとメアリの前に女王として9日間だけ即位したジェーンの短い生涯が彼女を取り巻く環境と共に簡潔に分かりやすく書かれている。わずか16歳で好きでもない人との結婚。両親からも薄情な献上品のよう扱われ、夫、義父母からも駒の一つとして扱われ… また、メアリも女王を掴みとった瞬間からエリザベスの脅威にさらされ… 歴史ものを読むと肉親間での陰謀に少々気持ちが滅入ってしまう。何処の国でも同じような策略があったのだと改めて実感。舞台を観に行けなかったので本書で納得。
2014/04/12
R
タイトルの通り、まさに悲劇を生きた女性の数奇な運命を描いた小説でした。ほぼ史実のままなのか、そうだとしたら、どれほど酷い親を持ったんだろうと、ジェーンの哀れというか、悲劇が一層際立って見える。表紙の絵がとても有名だけども、小説内でこのシーンを描いた部分が思いのほか救いがあるようにも読めて、悲喜劇の結末として秀逸だと感じました。16歳という年齢で、しかも女の身で、あの時代、メアリとエリザベスと生き残りを賭けるなんて、自分の人生はイージーだと思えてならない過酷さを見ました。
2018/07/09
Ayumi Katayama
この本の存在を知ったのは、先日読んだ中野京子『名画の謎 対決篇』による。表紙を飾っているのがその絵だ。不穏な空気を感じる。純白のドレスを着た若い女性が目隠しされているからだ。前に置かれている小さな台はなんなのだろう。彼女はそれを手探りしているようだ。何故、目隠しされているのだろう。だが、しかし、そこで考えを踏みとどまる。それ以上を考えたくなくなる。なれど、絵は他にも訴える。左側には放心する女性、そして右側には斧に手を触れる男性。そう。目隠しの女性が今まさに斬首されようとしているのだ。
2019/05/06
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