眼鏡屋は夕ぐれのため: 佐藤弓生歌集 (21世紀歌人シリーズ)
眼鏡屋は夕ぐれのため: 佐藤弓生歌集 (21世紀歌人シリーズ) / 感想・レビュー
あや
二十代の時に一度だけ角川短歌賞の予選を通過したことがあるけれどその次の年の受賞者が佐藤弓生さんだった。私は32歳で一度詠歌を辞め6年前に詠歌を再開した。歳月の流れを感じる。歌会と読書会でご本人様にお目にかかったことがあるけれどとても言葉を大切にされる気品のある方だった。心に残った歌をいくつか。 湯に味噌の溶けだすさまを人形はかつてこうして還っていった/きぬさやのすじとりとわにつづけつついくさのうわさしていましょうよ/奪いあうために生まれた人類が芝に球蹴る遊び あそべよ
2023/05/27
いやしの本棚
佐藤弓生さんの短歌は、読んでいると、不思議な感覚におそわれる。自分が見ている世界の、現と夢、生と死の合わせ目にそっと指をさしこまれ、わずかにおしひらかれるような。合わせ目はここだよと、触れられることで感じるような。その合わせ目は、普段は見えない。夢を、死を見ないようにしているから、そこに合わせ目があることを忘れている。歌が合わせ目を、ほそくひらいたり閉じたり、少しずらしたり捩らせたりするから、世界の見え方が小刻みに変化して、かるい、気持ちのいい眩暈がする。
2017/06/17
二藍
歌集を読んだのは初めてだったんだけど、すごくよかった。『ふうらりと焼きたてパンの列につく明日という日もあるものとして』―この歌は一目で好きだと分かった。夕ぐれ時の買い物帰り、ただよってくるパンのにおいにつられ、「あしたの朝食に買っていこうか」なんて、立ち寄った人々の情景が浮かぶ。あったかいのに刹那的で、はかなさが残るのがいいなあ。ほかの歌も書き写したいくらい素敵なものばかりだった。ゆったりできて満足。
2014/01/26
ワンタン
短歌に親しんでいないためか、ひどく難解に感じた。情緒的な言葉が少なく、メタファーも硬質な印象。他の歌集も読んでみようか。
2017/08/02
toron*
まぶたとは貧しい衣 光を、とパイナップルに刃を入れるとき こんなにもきれいにはずれる翅をもつ蝉はただひとたびの建物 わがまちは夢に甍をあらそいて そう、人類をにくんでいるよ あおむけに水から空へほうられていつかわたしは矢をもたぬ弓 どれほどの会話が風になったろう道路と線路まじわるところ 小鳥たち播きおえてのち空は手をうしないなんのかなしみもない 上の句、もしくは下の句の気づきにはっとする歌が多かった。解らない歌も多かったのだけど、解らないのに何故か惹かれる歌も多かった。
2021/01/16
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