日本霊異記の世界 説話の森を歩く (角川選書 457)
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日本霊異記の世界 説話の森を歩く (角川選書 457) / 感想・レビュー
saga
日本霊異記がずっと気になっていた。しをんさんの父上・三浦先生が本書を上梓されていたのを知り購入。仏教思想を基盤とした霊異記説話は、神話とは一線を画した感じで、それを判りやすく解説されている。日本昔話でもおなじみの一寸法師や浦島太郎の元となる説話はホノボノ系ではなく「あざとさ」を感じるような話だったことに興味をそそられた。何らかの証拠の品が遺されているという事実性が、実は事実に基づくものではなく、本当にあったことのように思わせる語りのテクニックであるということに驚かされた。
2015/08/02
テツ
日本最古の説話集である日本霊異記についての解説。著者は三浦しをんさんのお父様である三浦佑之氏。現代社会に生きるぼくたちには説話を通して語られる、善悪には必ず報いがあるという考え方についてピンとこないけれど、神々が闊歩していた風景がまだ記憶に新しい太古から、仏教的な世界観をベースにしたそれなりに新しい時代へと変貌する狭間には、こうした物語もそれなりに論理的な内容へと変わっていくんだろうなと納得しました。時代と共に語られる内容も綴られる内容も、それに即した形へと生まれ変わるんだろうな。
2021/01/04
fseigojp
仏教が浸透するまえの古代末期の世相がよくわかる
2019/07/21
はちめ
神話と民話の中間くらいに位置している。母親をして子を捨てさせる行基の話のように民衆の共感を得られないまま埋もれた話もある。また、景戒自身が仏教的報恩感を広める意図で創作した話もあるかもしれない。ちょっと驚くのが、話の時期としては概ね8世紀のできごとで統一されているが、話の舞台は日本の様々な地域に広がっている。9世紀の人々はこれらの地域名を聞いて概ねの場所をイメージできただろうか?ぜひとも原文に挑戦したい。☆☆☆☆★
2020/05/04
半木 糺
平安初期に成立した『日本霊異記』を「古代神話的世界から仏教倫理・律令国家体制への過渡期にあるもの」としているのが興味深い。本書に引かれている説話は事実譚から霊験譚まで様々であるが、一貫しているのは平城、もしくは平安京という都市社会の成立なしには生まれなかったものばかりである。その意味では当時の人々の心性を探る上でこれ以上ない歴史的史料と言えるのではないだろうか。
2013/06/22
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