蟇の血 (ビームコミックス)
蟇の血 (ビームコミックス) / 感想・レビュー
HANA
田中貢太郎の原作を近藤ようこが漫画化した一冊。本書を見つけた時は、何故こんなマイナーな作品を。と歓喜が抑えられませんでした。内容は一種の幽霊屋敷もので、そのうちに秘められた訳のわからない恐怖に戦慄したものであった。原作は前知識なしに読んだので、内容のグロテクスさや突飛さに圧倒されたが、本書で漫画化されると大正や戦前の文学に纏わるどこか神経症的な空気が明瞭になってる気がする。特に婚約者との関係や女性との夜の道行が原作よりくっきりと書き込まれているせいか。漫画でしか出せない雰囲気に満ちていて実に良かった。
2022/12/01
モモ
田中貫太郎が関東大震災が起きたばかりのころ発表した怪奇小説『黒雨集』に収録された怪異譚。近藤ようこの絵が話に合っていていい。三島は海岸で一人の傷ついた女と出会い、一緒に住むことになった。そのことを先輩に相談した帰り道で、道を聞いてきた女を家まで送ると、その家から出られなくなる。その家で繰り広げられる狂気が怖い。映画だと見ていられないかも。原作も読んでみたい。
2020/11/21
Vakira
原作は田中貢太郎さん。貢太郎さんは知らなかった作家。なかなかゾクゾク物。近藤ようこさんが描くとかなり艶めかしい。浦島太郎の現代版かしら?助けるのは亀の代わりに少女。主人公は優しい青年でまた別の道に迷った女に道案内。暗い夜道を心配に思いとうとう女の家まで送ってしまう。女主人と女中とばあやそこにいるのは女性しかいない。竜宮城ではなく女達の館。家で待つ少女と女の館。どうなる青年。待っているのは残酷な結末か?ハッピーエンドか?原作の田中貢太郎さんの小説読んでみたくなりました。
2020/11/29
井月 奎(いづき けい)
近藤ようこにまた物語作家を教わりました。夜の闇、人の闇、心の、そして魑魅と魍魎たちの闇が人をおおいつくす様子がじわりじわりと描かれています。そして台詞の綺麗さは作者の田中貢太郎の言葉への愛情と美意識の高さが伝わり、原作への興味もいや増します。お化けや物の怪、魑魅魍魎はこの世にいるのですけれども、住むのは光の届かぬ闇、そして人の心です。鏡花の物の怪、柳田国男の民話、折口信夫の神々、上田秋成の幽霊。そして田中貢太郎の魑魅魍魎。その者たちは静かにこちらを見つめています。人の世はその者たちの世でもあるのです。
2019/08/17
澤水月
悪魔的幻想的な雰囲気が近藤ようこさんらしく素敵。翻弄される主人公、少し蓮實重彦『伯爵夫人』も想起。薔薇とヤモリと蜘蛛の巣の和装にやられた! 田中貢太郎読み返したくなる
2018/03/01
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